はじまりの話 | ナノ
パソコンの画面を何度も見返す。
手元に握りしめているメモに走り書きされた二列の数字と、画面に並ぶたくさんの数列からそれと同じ数字を見つけそれが間違いでないことを、吹雪は何度も確認した。

(間違いじゃ、ないよね)

それからやっと自分の目を信用出来て、今度は慌てて携帯を手に取る。
履歴の一番上に―と言っても履歴はほとんど一人で埋まっているけど―表示されているそれを選択した。

単調なコール音が流れる。

二回目のコールが鳴り終わる前に繋がった。
きっと待っててくれたんだ、とその早さから推測出来て吹雪は笑みを浮かべた。

「染岡くん!」

嬉しさを抑え込めずに早急に名前を呼ぶと、声がでかいと呆れた声が耳元に届く。
それでも、その声にもどことなく浮き足立った様子が伺えるのは。

「受かったよね、僕たち。染岡くんも、見たよね」

『ああ、センター自信無かったのに…』

結果を見るまで生きた心地がしなかったぜと安堵したように染岡が言う。
吹雪もそれに頷いた。

決して手応えがあったわけではなかったが、しかし結果が出たいまはもうそんなことは気にならなかった。
だってこれから待っているのは楽しい未来なのだから。

「…これでまた一緒に、サッカー出来るんだね」

『そうだな。
三年…いや中三から数えたら四年か、なんかこうして終わってみるとあっという間に感じるな』

「うん。でもやっぱり長かったよ」

『ははっ、そうだな』

FFI が終わって日本に帰国してから、吹雪が北海道へ帰るために向かった空港で別れを惜しんでいたとき。
ふたりはある約束をした。
それは、同じ大学を目指し、また再び一緒にサッカーをしようというもので。
大学生になれば、上京も可能だからと言う吹雪に染岡は強く頷いたのだった。

最初はお互いに離れがたい淋しさからの、所詮は口約束だったように思う。
しかし月日を重ねるごとに、電話をするたびに、どこの大学のサッカーが強いだの、将来に繋がるプレーが出来るだのから、ふたりで住めば家賃も安くなるだのと現実的な話へ次第に発展していった。
そして本当にふたりは同じ大学を受験し、晴れて合格が決まったのだ。

『お前これから忙しくなんだろ。
北海道から引っ越してくるんじゃあな…手伝いに行けりゃ良いんだけどよ』

「飛行機代だってバカにならないんだから気にしないで。
それに、そっちでのアパートなんかの手続きは全部染岡くんまかせになっちゃうし」

『お前こそ気にすんなって。
ちゃんとやっておくからよ』

「うん、ありがとう」

夢にみていたやりとりに、吹雪は胸がいっぱいになる。
これからは好きな人と一緒に暮らして、サッカーをして。

楽しいことばかりが思い浮かぶ。

「染岡くん、僕すごい幸せなんだけど」

これ夢じゃないよねと呟けば、頬っぺたつねってみろと染岡が笑う。
つねってみれば頬にジンとした痛みが生まれて、吹雪は安心したように痛いやと微笑んだ。
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