「私はウイルスに感染したらしい」
「そりゃあ厄介なこったな」
「原因はあの看護員だ、アクリャが私にウイルスを」
「だからアイツはそんなこと絶対しないって言ってるだろう?」
ロディマスは呆れた口調でウルトラマグナスを制した。
やれやれまた始まった。マグナスの「ウイルスに感染した!」騒ぎが。初めて聞いた折にはパンデミックの前触れかとロディマスも青ざめたものだが、どのような症状なのか問い詰めてみると、それは病気でも機体異常でも、何でもなかったのである。
「アンタはアイツが好きなんだよ、マグナス」
「すっ、す……すまん、何といったか」
「『すき』だよ!! たった数文字だぞ」
「すまない……すき、好きとは……病気ではないのか」
「違えよ」
「何もしていないのにブレインが彼女の情報で埋め尽くされたり、彼女のことを思うだけでスパークの高鳴りが止まらなくなってもか」
「それを好きっていうんだよ! 全く、そんなうじうじ悩んでないでさ、さっさとアクリャのとこ行って何か話してくるといいんだよ。逮捕は無しの方向性で」
「行って、何を話せばいいんだ」
「世間話でもすればいいだろ……あーもー、めんどくせぇ。オレがアポ取ってやるから今から行ってこいよ」
「い、今だと。まだ仕事があるのに……」
動揺しているマグナスを無視し、ロディマスは医務室で待機しているであろうアクリャの個人通信を繋げた。彼女の音声がマグナスに届くように、スピーカーを開くことも忘れなかった。
「おうオレだけど。今って時間あるか?」
『大丈夫だけど……何かあったの?』
「いや、ちょっとマグナスの奴がな、お前と話したいんだと」
『マ、マグナスが!? えっと、それは、何かの打ち合わせとか』
「あー違う違う。世間話したいんだって。いいだろ? いい? よし今から連れてくから!」
アクリャの返事を聞かずにロディマスは回線を閉じると、未だ挙動不審になっている自身の相棒の腕を掴んですたすたと歩き始めた。
「やめろロディマス、離してくれ」
「いーや、離さないね。それよりこれからオレが伝授する会話法をブレインに焼き付けとけ。役に立つから」
多分な、と付け加えると、ロディマスは即席の口説き方講座を、医務室に向かう廊下を歩きながらウルトラマグナスに向かって始めたのであった。