「いてててて」
「大丈夫、テイルゲイト? しかしなんでまたこんなところをすりむいたりしたの? ……まさかサイクロナスに苛められたんじゃあ」
「憶測だけで物を言うな。お前は仮にも医者だろう」
「貴方の日頃の態度が悪いんでしょ。こないだだってテイルゲイトを突き飛ばしたりして」
ヒートアップしかけている2人を止める為に、ボクは慌てて治療台の上に立ちあがった。そうしたところで、ボクよりも遥かに背が高い2人よりも大きくなんかならないけど、そうでもしないと何だか大変なことになりそうなくらい2人は睨みあっていた。
「違う、違うよアクリャ! ボク慌てちゃって、自分で転んだんだ。サイクロナスは悪くないよう!」
ぴょこぴょことジャンプしながら声を張り上げた瞬間―――ボクは必死すぎて、足元に医療器具が転がっていたのを見落としていたんだ―――目の前がぐらり、と揺らいだ。両手をバタバタさせてバランスをとろうとしたけど遅かった。ボクの体は前のめりになって、台の上を転げ落ちた。そのまま床へとまっさかさま。襲われるであろう衝撃を予期して、思わず目を閉じて―――……あれっ、どうしたんだろう。いつまでたっても床に着かない。
恐々目を開けてみると、酷く慌てた顔の2人がボクの顔を覗き込んでいた。そこでやっと、ボクは自分の体を、サイクロナスとアクリャが床に叩きつけられる直前に受け止めてくれたのだということに気がついた。
「ちょっとテイルゲイト大丈夫!?」
「ご、ごめんね、ボク―――」
「何をしている。怪我を増やすつもりか」
「そっ、そんなつもりは」
「念のためもう一回検査しよう! もしかしたら感覚回路に異常があるのかも」
「いやそうじゃなくて……」
「少し黙っていろ。治療がしにくいだろう」
ボクの必死の弁解は、先走る2人に思いっきり無視されるという形でかき消されてしまった。
全く、2人とも慌てん坊なんだから―――と溜息をついたところで、(意外とこの2人って、似た者同士で気が合うんじゃないかな)という考えがボクのブレインを過ぎったけど、口に出すのは止めにした。
これ以上精密検査されたら、堪ったもんじゃないからね!