ロディマスは公私を問わず、派手に目立つのが何よりも好きである。
戦闘のスタイルにおいてもその傾向が見え、自身の活躍を追い過ぎるあまり生傷も絶えない。その度に医師であるラチェットや、彼の愛弟子であるウーマンサイバトロニアンの看護員、アクリャに小言を言われるのであるが、聞き流す程度で済ませてしまい、次の戦闘では性懲りもなくまた傷を負ってくるのである。
それは本日も同様であった。いつものようにロディマスは医務室のドアを叩き、師匠の不在中の留守を仰せつかっていたアクリャに、治してくれと頼んだのだが―――
「……おい、何か今日おかしくねぇか」
「そう?」
「なんか物足りねぇんだよ」
「そうかな」
「そう、そうだ。いつものお小言が今日は無いんだ」
ポン、と両手を打ったロディマスに「動かないで」と口早に伝えると、アクリャは黙々と治療を続けた。ロディマスの言葉には何も反応しないまま。
「そうだろ。今日のお前、なんだかやたら静かだ」
「よかったじゃない。小言聞くのは嫌いでしょ」
「嫌いだけどよー……なんか、物足りねぇ」
「ふうん」
そっけなく返事を返されて、いよいよロディマスは不安な心境になった。いつもと違う態度を取られる、それがこれほどまでに心地悪いとは。これならいつものように、小言を聞いた方がいくらかマシだ―――
「なあアクリャ、普通にやってくれよ」
「普通ってどんな」
「いつもみてぇに、叱ったりしてくれよ」
「……」
「頼むからさ、な」
自身の腕を治療しているアクリャに向かって、ロディマスは懇願した。
暫しアクリャは無言であったが、憐れに思ったのだろうか、医療器具を患部から離し、ロディマスの顔を見た。そこで今日初めて、2人は視線を合わせたのである。
「なら、怪我するのも大概にして」
「お、……おうっ」
おずおずと頷いたロディマスを確認すると、アクリャはすぐに治療に戻ってしまった。しかしながら、先程よりも彼女が纏っている雰囲気が、幾分か柔らかくなったようにロディマスには感じられたとか。