サマータイム・スケルツォ


学生寮パロディ
※キャラ崩壊










01

初夏だった。「だりい」ごろりと転がった南雲を見て一言、照美はだらしがないねと言った。寝転がりながら。
学校に程近い寮の一室、相部屋にしては狭すぎるなか、小さな窓に足を向けて二人は抑揚のない声を出した。ここには冷房はおろか、扇風機すらない。
じんわりと梅雨の近づく、初夏だった。
「おめー人のこといえねーだろ」
「僕は年中日がなごろごろしてるからいいんだよ!君は信じられないくらい暑くなってからこそピンピンしてるじゃないか。雑菌みたいに」
「俺はこーゆー中途半端な温度が一番だるくなんの」
「普段から無駄に暑くるしーんだからちょーど良いだろ、繊細な僕と違って」
「今度優等生の実態をみんなに公表してやんよ!」
照美は南雲の足を蹴った。
「ただいまー、もー、二人ともだらだらしないでよ、いつものことだけど」
突然ドアが開き、基山が入ってくる。その際、南雲の足を思い切り蹴った。向こう脛だったので南雲は身悶えた。しかしそれに見向きもせず、基山は部屋の奥へと進んでいった。勝手知ったるなんとやら。ここは南雲と照美の相部屋だったが、そんなことをいちいち気にする基山ではなかった。
「おかえり基山くん。なんかいい話ある?」
照美が顔だけを基山に向け、たずねる。どさどさと書類を部屋の中央のちゃぶ台に置きながら基山はわらった。「あるある」あまりに無造作だったので山が崩れたが放置だった。
「オマエそーやってテキトーにすんのやめろ。ていうかここオマエの部屋じゃねーだろ」
「寮生会議ではこの議題でもちきりだったからね〜、たぶん照美くんはうれしーと思うよ」
「え、どんな話?」
「おーい」
「寮生が新しく増えるんだ」
照美はのそりと這って基山のところへ行き、その際プリントを踏んずけた。南雲の提出用のプリントである。しかしそのまま足の動きと一緒に皺だらけになってしまった。
ふうん、と照美は気のない返事をする。「なんだ、すごくふつう」
「時期は微妙だけどね、」基山はカーテンを開けた。「君たち、日の光くらい浴びなよ」
「部屋割りが完全に終わったころだし、難しい話だったんだけど、その寮生、この部屋にくるんだ」
「えっ」南雲が声を上げた。「定員オーバーだろ」この寮は一部屋に二人ずつの相部屋だった。南雲は照美と二人で一年を過ごしてきた、言わずもがな大変だった。照美はその小奇麗な見た目に反し、やることなすことの大半は大雑把だったからだ。こまごまとゴミが散らばるこの部屋も、人が寝そべることができるようになったのは南雲の涙ぐましい努力の賜物である。
しかし南雲の声はまた黙殺される。
「そこで照美くんにはわるいけど、上の部屋に移ってもらうってことになったんだ。ごめんね」
「三階の?」照美の目が輝いた。基山はゆっくりと頷いた。
「希望通り、一人部屋。期間限定で」
「あーそれで」
「急なお願いで移ってもらうんだし、これくらいはね〜」
照美は基山に抱きついた。
「ありがとう基山くん!僕はいま最高にうれしい」
「こんな汚い部屋ともお別れだ」勝ち誇ったような目で南雲を見た。
「オイ、言っとくけどここのゴミほとんどオマエのなんだから掃除はしっかりしてけよな」
「なに言ってるんだ、君も仲間が増えて嬉しいだろ」照美の目線がホコリに移る。
「なあそれって寮生のことだよな?」
「うん、俺も新しい友達ができてうれしい」
「ウン、もう俺にはよくわからん」
「とにかく、一週間後に来るから、それまでに綺麗にしておいてね」基山はちょっと嫌そうな目で南雲を見た。「これとか」
「だって。がんばれ南雲くん」
「もういいからさっさとでてってくれ」




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