私は出雲椿
特にこれといって飛び出る物はない四天宝寺中に通う3年生
テニス部は全国大会とか出れるほど有名だけど、私は良くて大阪府大会止まりのバドミントン部所属
唯一他の人と違う所はモノマネ王子こと一氏ユウジが幼馴染みということだろう
親同士が仲が良いのもあって幼い頃から一緒に過ごすことが多かった
最初こそは他のコよりも仲が良い男の子ということくらいにしか思ってなかったが、中学に入ってからユウジが女の子にモテ始めたのを知って私は焦った
そしてこのことが恋だということにも気づいた
しかし、その気持ちに気付いた時はもう遅かった…
♯1 届かない
「ユウジには好きなコがおったっちゅー話や。小春っていう可愛らしい名前やけど男やもんなぁ」
「白石!勝手に人の心読まんといて!」
「だだ洩れだったで。あんなホモやめて俺にしときぃや」
「いやや、あんたの彼女になると大半の女子が敵になるし」
「その代わり俺のこと独り占めし放題やでー。四天宝寺一モテる男、白石蔵ノ介くんが椿のものになるんやでー、絶頂やないか!」
「それ自分で言うとかないし。それにエクスタばっか言ってるこはウチには要りまへん」
「ほんま、椿はつれへんわ」
「そりゃおおきに」
こいつは白石蔵ノ介。同じクラスでテニス部部長。整った顔と色気たっぷりの仕草と性格で四天宝寺で一番モテる男
彼の彼女になりたいこは山程いるわけで、常にファン同士のイジメ合いという内乱が起きている
そんなやつに何故か私は好かれてしまっている
私は特に美人でも可愛いわけでもないごくごく普通の中学生
テニス部のユウジの紹介で知り合い3年になってクラスが一緒になりおまけに委員会も同じ
「私はユウジのことが好きなんやから」
「でもユウジは小春しか眼中にないんやし。まあお陰で女作らなくてすんどるけどな」
「悲しくなるから言わんといて」
「ユウジのどこがええの?」
「一緒にいて笑顔になれるとこ」
「純愛やなー。俺は椿のどこがええかって?一途に相手を想ってるとこやで」
「聞いてないから」
白石にユウジのことが好きと知られてからこんなやりとりが毎日のように繰り返されてる
「なあ、椿」
「なん?白石」
「今日部活何時まであるん?」
「今日はミーティングだけやからすぐ終わるけど」
「そりゃ良かった。今日うちの部活休みやから放課後みんなでボーリング行くんやけど椿もいかへん?」
「それ私行ってええの?」
「もちろんやで、それとも俺と二人が「よっしゃー!ユウジとボーリング!」
「…まあええわ、部活終わる頃に迎えに行くわ」
「それはあかん!現地集合でええわ。白石迎えに来たらファンに殺されるわ」
「なんやそれ!?」
「あんなー、今こうしてあんたと話てるだけで私の命危ういんやで?私がユウジの幼馴染みじゃなかったらとっくにいじめられて不登校になっとるわ」
「納得いかへんけど、分かったわ。じゃあ部活終わったら駅前のボーリング場な」
「うん、ソッコー行く」
**************
「なんで椿がおるんや!?あ、俺がおるからか。」
「なんでやねん!誰があんたみたいな変態好きになるか」
「ほんま椿は男見る目ないなぁ。そんなんやから彼氏居ないんやで?まあ俺には小春がおるから関係ないっちゅー話やけど」
「ユウくん、私もよv」
「私には光がおるもん、なぁ光?」
「え、俺っスか?」
「お前に今決めたやろ!財前やめといた方がええで。あいつ胸ないから色気とか何もあらへんでー」
「んだと!?このエロガッパ!!」
「あ゛?誰がエロガッパやねん?」
「はいはい、そこらへんで終わりにするたい」
「わい早くボーリングやりたいー」
このままだと埒が空かないのを悟った千歳が止めに入る
とりあえず私は光に連れられてシューズを借りにいく
ユウジと小春ちゃんと金ちゃんでボールを選びに行き、白石と謙也と千歳が荷物番をしている
「椿先輩本当に素直じゃないスわ」
「自分でも分かっとる」
「だいたいなんで俺なんスか?部長の顔が怖いんやけど」
「白石はほっといてええから」
「まあユウジ先輩もユウジ先輩ですわ。椿先輩の性格知っといてあれなんやから。先輩色気なくても愛嬌はあるんやから、笑っといたらええんですよ」
色気がないっとさらっと失礼なことを言われた気がしたが、今の私にはその言葉が嬉しかった
いつもユウジが笑わしてくれるから笑顔でいることが多いんだ
ひとまず光の言葉が嬉しくて軽く抱きついた
「光ー!おおきに!」
「うわっ!?くっつかんといてください。部長がこっち向かってボーリングの球投げようとしとるんで」
「白石ー、ボーリングの球は投げたら危ないからやめとき。てか光に当てたら絶交するで?」
「それはあかん!財前、お前早く椿から離れろ!てかお前ら早くこっちきいや!」「ということで先輩離れてください。てかそういうことはユウジ先輩だけにしないとあかんですよ?」
「しゃーないなぁ。そや!なあ皆、負けたやつがたこ焼き奢るってどや?」
「それええなぁ!わい絶対勝つ!」
「金ちゃん、私も負けへんで。きっとユウジがビリやからユウジに期待しような」
「おん!」
「椿、なんやねん!俺絶対お前には敗けへんからな!小春、俺の勇姿ちゃんと見ときいな!」
「もちろんよーv」
このあと謙也が全員にたこ焼きを奢った
あいつスピードだけでガーターばかりだった
ユウジは基本に忠実なプレイでスコアの良かった白石のプレイを真似して好成績
帰宅のとき、なんだかんだでいつも家まで送ってくれるユウジ
そんな優しい所がやっぱり好き
でもまだこの気持ちはユウジには届かない
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