両親が海外に転勤になり、3年生に進級と同時に引っ越すことになった
海外にいくのを断固反対した私は一人、従兄弟の裕次郎の家に住むことになった
もともと沖縄には小学校3年生まで住んでいたし、抵抗はなかった
東京に来る際に沖縄にあった家は売ってしまったけど、裕次郎のおばちゃんが家に来なさいと呼んでくれた
もともと裕次郎とは年も同じで、とても仲良しだった
沖縄に行くための荷物はもうダンボールにまとめて送ってあり、後は私自身が沖縄に行くだけだった
そんな私も今は飛行機の中であと15分もすれば沖縄に着く
空港には裕次郎が迎えに来るとおばちゃんから飛行機に乗る前に電話があった
裕次郎と時々メールはしていたが、会うのは2年ぶりくらいであった
「まもなく、着陸いたします」
機内アナウンスが入り、リクライニングを直した
今日から新しい生活が始まると思うと何か緊張する
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飛行機を降りて荷物を受け取り待ち合わせの約束をしている、到着ロビーの時計のあたりを見渡した
が、裕次郎は見当たらない
あいついつもフラフラしているからどうせ時間通り来ないだろう携帯を取りだして、近くの空いているベンチに腰を下ろした
「やー、もしかして椿やっし?」
突然声を掛けられて、視線を携帯の画面から声の主へと移した
明るめの茶色いふわふわの髪で、テニスラケットをリュックに差して赤と白の帽子を被った男の子だった
「やっぱそのちら、椿やっし。久しぶりさぁ!」
「え、えっ」
「わんやっし、裕次郎やっし」
「裕次郎ー!?」
私の知っている裕次郎は、黒髪のストレートで背の低い細っこい男の子だった
「うわぁ、裕次郎変わりすぎてて分からなかった」
「わんはすぐ椿のこと分かったさぁ」
「制服ってことは学校から直接来たの?」
「おう、部活だった」
「部活あったのにわざわざ来てくれてありがとうね」
「いいっていいって。
じゃあそろそろ行くさぁ」
荷物持つさぁ、と裕次郎は言ったけど、裕次郎も荷物あるからいいよ、と断ると、わんだって鍛えた、と言い荷物を取られた
確かに昔より、筋肉がついて男前になっている
裕次郎がカッコイイと思えた
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