放課後、最初っから下駄箱で待ってるのは恥ずかしいからみんなが帰ってからにしようと教室に座って待っていたら、バタバタと教室の外から誰かが走ってくる音が聞こえた。

「忘れもん〜っと、あ、百瀬さん、だっけ」
「あ、犬岡くん、だっけ」

そうだ、その爽やかさと優しさですぐ女子に人気になった犬岡走君だ。わー、間近でみたら本当に背が高いや。ニコニコと笑ってきたので、なんだろうと首を傾げると、

「もう少しで終わるから、体育館まで来なよ。待ってるんでしょ?」
「うん。いや…てっちゃん、黒尾先輩が見に来るなって言ってるから…」
「大丈夫だって。コッチで待つより体育館のほうがすぐ一緒に帰れるじゃん」
「た、しかに…そうかも!」

てっちゃんにはごめんなさいって謝ろう。犬岡君もそういってくれたし、よっしゃ見に行っちゃお!てっちゃんのかっこいいところ、見なきゃな。中学の時中々見れなかったし、目に焼き付けとこう。きっとかっこよくて、輝いてるんだろうな。あ、鼻血でるかも…。

「えっ!?どうしたの?」
「いや、ちょっとね!」

想像したら鼻血出てきた。ティッシュティッシュと。鼻にズボッとティッシュを詰め込むと、それをみていた犬岡君が笑った。

「面白いね、百瀬さん」
「ええっそんな恐縮です!てゆーか百瀬でいいよ!」
「おっけ。俺も犬岡でいいよ。…ぶはっ」

あれ、噴出された。そんなに面白い顔かなあ。鏡のところに駆け寄って自分を見る。…えー?面白いかなあ。とりあえず鼻血はすぐに止まったみたいだからずぼっととって口元を洗った。よっしおっけい!

「お待たせしました〜」
「何か、テンション高いね。思ってたのと違う」
「えっそう?私そんな静かそうに見えた?」
「フツウの子かと思ってた」
「えっ普通だよ!?超普通だよ!?」
「あー、おもしれー」

ガハハと笑い出す犬岡くんに疑問を持ちながら、体育館に行った、ちょっとだけ、ちょっとだけとひょこりと顔を出すと、てっちゃんを見つけた。わ!てっちゃんが!ボールを!わ!スパイクかっこいい!てっちゃんってあんなに高く飛べるんだ。かっこいい。あ、研磨もいる!わああ!

「…百瀬、鼻血」
「えっ!?あれ!?」

鼻血がまた出てきたらしい。また鼻にティッシュをズボッと入れようとしたけど、やめなさいと犬岡君がいうからとりあえず下を向いて鼻をつまんだ。ええいまどろっこしい!やっぱりつっこもうとティッシュを構えたら。

「あれ、君黒尾の幼馴染の子じゃん」
「えっ…顔面偏差値高めの人だ!」

つい声に出してしまったけど。顔面偏差値高めの人はぶはっと笑って、「なにそれ」って腹を抱えてた。身長はあたしと同じくらいだけど、すっごい好みの顔してる。まあてっちゃんが一番かっこいんだけどね!

「ちょっと黒尾ーお前の幼馴染なんとかしてー」
「あっだ、ダメですよ言ったら!」

慌ててガバッと腕を掴むけど、てっちゃんがこっちをむいた。わ、やばい。怒られる。怒られちゃう!視界にはずんずんとやってくるてっちゃんと、練習に戻る犬岡。あわわわ、とりあえず隠れようと顔面偏差値高めの人の後ろに行った。

「真紘」
「ひいいごめんなさいちょっとてっちゃんの練習してる姿が見たかっただけなんですううううあと研磨もね!」

本当にそうだもん。だっててっちゃんかっこいいんだもん。本当に惚れ直しちゃったんだもん。汗を流しながら部活頑張ってるてっちゃん、かっこよすぎて鼻血出ちゃったし。

「はあ…あと30分で終わるからそこで待ってろ」
「…うん!」

やった怒られなかった!ニコニコ笑うとぐいっとあたしの背中を押して、体育館の端に座らされた。あ、顔面偏差値高めの人が手をふってる。ペコッと私は頭を下げた。

「ねえ、てっちゃん。あの人名前なんていうの?」
「……夜久衛輔。ちなみに3年な」
「あっそうなんだ…」

夜久先輩か。ふーん、めちゃくちゃ顔面偏差値高いじゃん。じーっと夜久先輩を見てると、てっちゃんがぐいっと顔を横に向けた。

「惚れた?」

何のことか分からなくて首を傾げると、ほっぺたをミヨーンと両手で引っ張られた。「いひゃいよ」というと「ぶす」なんて言葉を零して練習に戻した。離された頬は熱くて、じんじんした。

「…ブス……」

ブスなりに頑張ってるのに、てっちゃんはそんなこというんだっ。ふーん。もう帰りはてっちゃん無視して研磨とだけ喋ろ。押してだめなら引いてみろ作戦も決行だ!


20150823


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