「てっちゃん!てっちゃん!」

てっちゃんと呼ばれる男にがばっと抱きついた。男はたじろぎながら、彼女の名前を呼んだ。

「真紘!」

彼女と男は、幼馴染というやつだ。


*

高校一年生。それってすっごいわくわくすることで、この音駒高校に入学できたのはすごく嬉しい。だって、だって!

「てっちゃんだ〜!てっちゃんの制服姿かっこいいよ!」
「何言ってんだ。お前いっつも見てるだろ」
「環境が変わって改めてかっこよくみえたの!」

入学式が終わって帰ろうとしたんだけど、バレー部が体育館を片付けてるってことだから私は急いで体育館を見に行った。二つ上の幼馴染。バレー部の主将。かっこいいお兄ちゃん。あたしは黒尾鉄朗が大好きなのである!そして見つけた途端抱きしめにいったら案の定ひっぺがされた。そんなとこも好きだけどね!さあててっちゃんに会えたことだし帰ろうか、とおもったら、

「けーんーまー!」

もう一人の幼馴染、孤爪研磨がいた。あたしは走りだそうとしたら、てっちゃんがシートがぐちゃぐちゃだから走るなと腕を掴まれた。たくましい腕…すき!

「てっちゃん好きだよ!」
「おうわかった。お前は端に寄ってそのまま真っ直ぐ帰れ」
「えー?わかったよ…」

こういう時、私はあんまり反抗しない。だってちょっと怒ってるんだもん。きっと私が邪魔しにきて怒ってるんだ。私は言われたとおり端まで歩いてそのまま真っ直ぐ歩いた。でも研磨には手をふっとこう。目が合ったからぶんぶん手を振ったら、小さくてをふりかえされた。よし、満足だ!帰ろ!

「ねえねえ君黒尾の幼馴染?」
「あ、そうです!」
「へえー、君が噂の…あ、ねえ。マネージャーしない?」
「あ、てっちゃん…黒尾先輩がお前には無理だからやめろって言われたんでしません!」

なんか小さい顔面偏差値高い人に声かけられちゃった。
あたしが中学3年生の時、音駒高校にいってバレー部のマネージャーするっててっちゃんにいったら全力で止められたからね。私そんなドジっ子じゃないけど、あれだけだめって言われたら私も悲しいどころかもういいやってなっちゃった。マネージャーになれたらもっと一緒にいられるんだけどなあ。誘ってくれたこの人はニヤニヤしながらそっかー、呼び止めてごめんねー。といってシートの片付けに行った。よーし、帰ろう!

「おい真紘。マネージャーはいんなよ」
「わってっちゃん!入らないよ!あたしは帰宅部で通す!バイトする!」
「はあ?バイトだあ?俺が許さん」

そういってあたしの背中を押して体育館から出た。何だかんだで送ってくれるてっちゃんが好きだよ。私はゆるゆるになった表情をおさえることができなかった。

「まだ15だからできないけど、16になったらするって決めてるんだ!」
「だから駄目だと言ってるだろ」
「だって暇じゃん!お金稼いで服とか買って友達といろんなところ遊びに行きたいよ!」
「すぐそこに学生の遊び場あるだろ」
「近場は行き過ぎてもう飽きたの!」

てっちゃんてすっごい保護者みたいなんだよね。私が不器用だからバイトには向いてないと思ってるんだろうけど、そんなできないわけじゃないし!なんとしてでもやってやる!

「真紘…声が大きい」
「あー!研磨!やっほー!」
「おう研磨。お前からも言ってやれ。こいつがバイトするとかほざきやがる」
「ちょっとー!言い方ってもんがあるでしょ!」
「クロは過保護すぎだよ…バイトぐらいいいじゃん」
「ほら!研磨は分かってくれるんだ!あ!そういえば今から同中と集まりあるんだった!ここまででいいよ!ありがとう!」

ぶんぶんと手を振って走り出す。うわー、とんだロス。でもてっちゃんや研磨に会えたから全然いいロス。ていうかローファー走りにくいなあ。これから毎日この靴かあ。ううん、でもてっちゃんと会える時間が増えるわけだし、楽しまなきゃ!


20150823

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