「あ、黒尾の幼馴染ちゃんだー」
「あっえっと…夜久先輩だ!」

移動教室の途中、夜久先輩と会った。夜久先輩は手をふって「じゃあねー」と言ってくれたので、ペコッとした。それを見ていた友達が「浮気?」なんてニヤニヤするからバシッと肩を叩いた。

「いったいなー、もう」
「まずてっちゃんと付き合ってないもん…」

てっちゃん、私のこと本気にしてないの知ってるし。たぶんだけど私が言ってること冗談とか思ってるんだろうな、本気なんだけど…。そりゃ毎回好きとか言ってたら冗談って思うよなあ…はあ。

「でもさー、いい加減真面目に告白したらいいじゃん」
「ま、真面目って…そんな雰囲気になれないよ!」
「作ればいいんじゃない」
「つ、作るって…」

そんな、毎回バカ騒ぎしててっちゃんと帰ってたのに。いっつもわいわいして2人してバカするのが凄く楽しくて、いざ真面目となると…。

「恥ずかしいよ!」
「がんばれ」
「…」

だって、だって通常がこんなテンション高い私だよ?いやテンション高いかはおいといて、いっつもてっちゃんみたら興奮する私だよ?真面目に?それって落ち着かなきゃいけないんでしょ?無理だよ!てっちゃんが好きすぎて落ち着けない!助けてカミサマ!

*

「今日はよく会うねー」
「あ、こんにちは…」

友達と一緒に購買に行っていたら、パンを買いに着た夜久先輩と会った。ニコニコと笑って、私のほうに来た。

「名前なんだっけな、真紘ちゃんだっけ?」
「あ、はい!百瀬真紘です」
「黒尾いっつも真紘ちゃんの話してるよ〜」
「えっそうなんですかぁ!?」

ずいっと夜久先輩に勢い寄る。友達はパンを買いに行った。私はここでまって夜久先輩と話してようっと。

「あいつはバカだから昔カニを捕まえて鼻を挟まれたことがあるって言ってた。しかも鼻の穴見えてたって」
「ちょ、ちょちょちょ!そんな昔の話やめてくださいよ!」
「だって黒尾が言ってたんだよ」
「てっちゃん…!」

許せないぞ!いくら好きだからってそれは許されない!私の恥ずかしい過去をバレー部の人に言うなんて最低極まりないんだから!

「まあ、そんなバカなところも可愛いって言ってたけどね」
「………そ、ですか」

可愛い、可愛い。
てっちゃんは頭をなでるのはたくさんするけど、可愛いってあんまり言わないんだよね。この前言われたけど。すっごいナチュラルに言われたけど。顔が熱くなる私に、夜久先輩は笑った。

「なんだー、ガチじゃん」
「え?」
「ううんーそれじゃあ俺行くねー」
「あ、えっと…あ、りがとうございました?」
「疑問系?あはは、じゃあね」

手をひらひらと振って帰っていった夜久先輩。夜久先輩が言ったことを思い出して、顔がニヤける。可愛い、可愛いかあ。てっちゃんが私のことをかわいいってほかの人に言った…何それ、めちゃくちゃうれしい!どうしよう!誰かに言いたくてたまらない!顔が熱いので冷たい手で顔を冷やした。あー、ニヤニヤ止まらない。

「わっ」
「うわっ!」

バッと振り向くと、てっちゃんが立っていた。何だ、購買にてっちゃんいるんだ!今度から頻繁に行かなきゃ!と思っていたら、てっちゃんが私のほっぺを握って伸ばした。

「何にやついてるんですかねー」
「にやちゅいてないよ!」
「嘘つけ」

そう言って離すてっちゃん。…なんだか不機嫌みたい。何でだろう。てっちゃん?と下からてっちゃんを見ると、てっちゃんは私の頬をまた伸ばした。もう、痛いよう。いくら私がモチモチ肌だからってそこまでしたら赤くなっちゃう〜。あーでも、てっちゃんの手ごつごつしてるなあ、あとカサカサしてる。タコでもできたのかな。凄いなあ、がんばってるんだなあ、私は無意識にてっちゃんの手を掴んでいた。離して、「いたいでしょ!」と言うとてっちゃんはチッと舌打ちした。

「つまんねー」
「なにさ。言いたいことあるなら言っちゃえば!」
「別になんもねーよ。ただムカつくだけ」
「…何が?」

ムカつくという単語にぴくっと反応してしまった。え、何が。何が。私の言動が?私の行動が?私てっちゃんがムカつくようなことしたっけ。うそ、嫌いになったかな。

「教えねー。ムカつくから」
「ムカつくって…何が!言ってくれないとてっちゃんムカついたまんまじゃん!」
「……」

てっちゃんは不機嫌な顔を私に見せつけた。すぐにてっちゃんの友達が来て、てっちゃんは私を無視してその友達と一緒に帰っていった。なんだか目の下からこみあげてくるものがあって、ぎゅっと唇をかみ締めた。

「おまたせー…って、どした」
「……意味わかんないよう…」

ムカつくって、結構傷つくんだよ。ねえ、私何かしたの?折角幸せな気分になってたのに、てっちゃんはそんなこというんだ。雫がポタリと零れた。ねえ、どうしたらいいんだろう。私が悪いのかな?助けて、カミサマ。


20150905


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