「わーユカちゃん何読んでるのー?」
「ファッション雑誌だよー。この恋愛について私の好きなモデルが語ってるのみてるのー面白いよ」
「え!読みたい読みたい!見せて!」
そう言うとユカちゃんはイスを寄せてわたしと一緒に読み始めた。うわあ、この人可愛い!今までバスケの雑誌しか読まなかったからなー、こういうの読んでみようかな。うわ、の発言大人っぽい!私も言いたい!
「駆け引きは上手なにょよ」
「いや噛んでるじゃん」
わー!ダメだ!言うだけじゃだめなんだ。やってみないと!てゆーか。
「駆け引きって具体的にどうすればいいの?」
真面目に読んでるユカちゃんはちょっと待ってといって答えてくれないから他の子に聞く。そしたら、こんな言葉が。
「他にも男がいるって思わせるとか?」
ちょ、ちょっとそれ二股!?いやいや、私はてっちゃん一筋だもん、むりむり!首をぶんぶんふると、えー、と不服そうな声が。
「じゃあ、その人のことを好きそうに見えて、実はそうじゃないとか…その人にべたべたするけど次の日には冷たくするとか…」
「それ駆け引きとかじゃなくて普通に最低だと思う…」
「あーもううっさいわね!あんたには向いてないのかもね!」
そう言われてカチンときた。何よ、やってやろうじゃないか恋の駆け引き。蓋を開ければ最低な女の子を演じることになるけど。でもこれで少し進展があれば…!
「私駆け引き上手になる!」
目をキラキラ輝やかせると、今だに考えてるユカちゃんが何それって笑った。
*
「あってっちゃんいる!」
「ばか声大きい!」
むぐ、と口を手で塞がれた。友達の感じの元行うことになった「駆け引きは上手なのよ作戦」(命名私)は、うろうろと中庭を歩いていました。この前中庭歩いてたらてっちゃん見かけたからもしかしたらっておもってたんだよね。よ、よし。てっちゃんの見えるところで…
「あー!こ、小林君じゃないかあー!」
なぜバレー部である犬岡くんを使わなかったかというと、同じバレー部でなんとなく作戦がばれそうで怖かったからである。
そして小林君はというと、いきなり呼ばれてびっくりしていた。メガネまで揺れてる。
「き、きぐうだね!」
「…え、えーと」
そりゃそうだ。初対面で名前を急に呼ばれて話しかけられたらそうなるよな。でもあとちょっとだから!
「あの、小林君ってさ!なんかこう…メガネが似合うよね!」
ごめん小林くん。なんか話すことなくて適当に言っちゃった。友達がもういいよのサインを出していたから、「ごめん突然!ご協力ありがとうございました!」といって頭を下げた。こちらこそ、と言われて小林君は去って行った。いいやつだな小林くん。まあ同じクラスの人なんだけど。友達に聞くとばっちり見てたっていうからウキウキしちゃった。しゃべり声まではあんまり聞こえないだろう。
「ふっふっふ、後はなんだっけ、好きとみせかけて、のやつだっけ」
「あんたまだするの?」
「え?だめ?」
「もう飽きたのかと」
んな!飽き性の私がここまで好きなんだからここで終わるわけないじゃないか!私はスマホをとりだしててっちゃんにLINEした。「てっちゃん好き!」と。すぐについた既読。「急にどうした」とだけ来た。「うそだよ」と超素っ気ない文送信!人差し指で送信ボタンを押してニコニコとしているとその一部始終をみていた友達が、「あんたバカでしょ」とため息をついた。え、なんでなんで?返事が返ってきた。返事の内容は、「なんだそれ」だけで、なんかもっと、俺は好きだよってくるかなって期待してた。そういえば、私てっちゃんに好きって言われたことないや。
「あんた駆け引き向いてないわ。雑なのよ」
「ええ!」
友達は呆れながら教室に帰っていったから私も急いで追いかけた。
20150830
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