てっちゃんは分かってくれたかな、私の気持ち。涙がほろほろ零れててっちゃんのほうを向けないけど、なんとなく分かる。戸惑ってるんだよね。いつも冗談みたいに好きだなんていって抱きついていた相手が突然真面目に言ってくるから。ちゃんと突き放せないなら、私から…。

「分かってるから!てっちゃんの気持ち…私のこと好きじゃないってことぐらい」

だっててっちゃんはいつも私のことあしらって、好きだなんていったこともないよね。可愛いは言うけど、それはきっと幼馴染としてで、分かってるから。うぬぼれたりしてないからね。

「…なんでそうなんだよ」

少しだけ怒ったような声。何でだ?びくっと肩が震えて、ぐしゃぐしゃな顔をてっちゃんに向ける。眉間に皺を寄せて私を見てる。

「好きじゃないって思ってたのは俺のほうだよ!いつもいつもばかみたいに好きだって言って…抱きついてきて…俺が今までどんな気持ちでいたか知ってるか?そのくせ男子とも仲いいから…この前とかさ…。本気じゃねーって思ってたから俺だってだせえ思いしたくなくてこんな風に接してたのに…あー!!」


不思議だ。てっちゃん怒ってるのに、全然怖くない。だっててっちゃんが言ってること、嬉しいんだもん。私の悪いところ全部言ってるけど、それって結局私のことが…。

「好きだ」

少しだけほっぺたが赤いてっちゃん。照れて私のいる方向とは真逆のほうを向くてっちゃん。ぶっきらぼうに言うてっちゃん。全部、全部てっちゃんが好きで。

「…これ以上はだせえことしか言えねーからもう何も言わね」
「……てっちゃんは何言ってもかっこいいよ」

涙を拭って、きゅっとてっちゃんの袖を掴む。てっちゃんは漸くこっちを向いて、赤い顔を私に見せて、おでこをこつんと当ててきた。バスケをしてたから身長はそこらへんの女子よりも高いけど、てっちゃんからしたらまだまだ小さいのかな。てっちゃんのおでこは熱くて、何だか私まで熱くなってきた気がする。

「…てっちゃん熱い」
「うっせえ」
「てっちゃん」
「…」

てっちゃんはゆっくりとおでこを離して、私の顎をくいっと持ち上げ、ゆっくりと私の唇に口付けた。その行為はスローモーションのようにゆっくりで、すぐ何が起こったか分かった。ゆっくりと離して、ぽかん、とてっちゃんを見つめる。

「あー、腰いてー」

トントンと腰を叩くてっちゃん。私はまだぽかんとしてて、てっちゃんは頬をぽりぽりと掻きながら、「あのよ」と。

「帰ろうぜ」

差し出された手を、私はゆっくりと手に絡ませた。帰ってからも、今さっきのことはフラッシュバックされ、思い出すたびにボンッと頭がショートした。今日という日が濃すぎて、私は今日、眠れそうにない。

「…今私たちは両思い?」

それって凄い気持ちいい響き。どうしよう、もうどうしよう!

*

「あ、真紘ちゃんだ」
「こ、こんにちは!」

また会ったねーって笑う夜久先輩。夜久先輩見るとてっちゃん思い出すなあ…。そう思うとニヤけが止まらなくて、口元がゆるゆるになる。それを見た夜久先輩は顔をしかめた。

「どした?」
「い、いや…」

どうしよう、あーもう駄目だ!助けてカミサマ!暫くニヤニヤが止まんないかも。急いで口元を隠すと、夜久先輩は不思議そうに私を見た。

「おい夜久。真紘にちょっかいかけんな」

私の肩を持ちずいっと体を出すてっちゃんに吃驚して、ニヤニヤが収まった。

「おー?黒尾は一体真紘ちゃんの何なんですかねー?」

ニヤニヤとしながら聞く夜久先輩に、私は俯いた。どう答えるんだろう。何かしっくりくる言葉が思い浮かばない。ドキドキしながら答えを待った。てっちゃんの出した答えは…

「俺はこいつの彼氏だよ!」
「えっ」
「えっ」

今、夜久先輩と声が被った。

「へー。そうなんだ。ふーん」
「んだよ。文句あっか」
「いや別にー?ないけどさー」

いや、えっと。その、そうなんですか?なんか思考がぐるぐるまわって上手く言葉が出てこないけど、今言えるのは。

「助けてカミサマ…」

私、幸せすぎて死にそうです。


20150907


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