バカだって人からよく言われてた。自分も充分頭がよく無いことは分かってた。けどそういうことなのかと思ってたけど、それは違った。

「百瀬は何も分かってないよなー。だからバカって言われんだよ」

とある男の子から言われた言葉。…同じ中学で、私に告白してきた男子。そのときは告白なんてされると思わなくて、あるときこういうことをいわれて本当に頭にキタのを覚えている。何も分かってないって、何が分かってないってことなの?私にはよく理解しがたいことで、本当に不思議だった。中学の時好きな先輩に告白したときごめんって即答されて凄い悲しかったなあ。泣いてたらてっちゃんどこかから出てきて私が泣き止むまで慰めてくれたなあ。背中を擦ってくれたり、いつもとは違う優しい声色に私はコロッとてっちゃんのことが好きになったんだっけ。そういえば、あの先輩てっちゃんに似てたな…。意地悪なところとか、部活に対しては熱いところとか…。そうだ、私はあの先輩とてっちゃんを照らし合わせてたんだ。確か、そのときてっちゃんが誰かと付き合うっていう噂が私たちの代まで回ってきて…なんだか頭がからっぽになってたとき、あの先輩に声をかけられて、一緒の部活に入って、好きになって…。何だ、私ってバカだなあ。回りくどいことしないで、ちゃんと告白すればよかったんだ。
私は学校に行って、朝練が終わってこっちにくるてっちゃんを待った。暫くしててっちゃんは来たけど、隣で女の子でてっちゃんの腕を組んでて、ニコニコと笑っていた。てっちゃんも笑っていて。私は吃驚しながら「てっちゃん…?その人…」と聞くと、てっちゃんは前の不機嫌な顔なんてなかったかのようにパァッと笑って、

「真紘、俺彼女できた」

と。私の中にある岩のようなものがガラガラ崩れていく感じがした。隣を素通りする彼女さんは可愛くて、ぎゅっと心臓が潰されたようになった。私はくるりと振り返って、

「ま、待っててっちゃん!私本当に――」

ピピピピッと携帯のアラームが鳴る。カーテンの隙間から太陽の日差しが当たって眩しい。目の前が自分の部屋だと分かったらがばっと起き上がってLINEを見た。まだてっちゃんのは未読になっていて、なんともいえぬ感情になった。

「…はあ」

朝からなんて夢見てるんだ。てっちゃんの嬉しそうな顔がまだ脳裏にこびりついてる。いい加減にしてくれ、そんなの見たくない。ゆっくりと起き上がり、支度を始めた。

*

寝癖が本当に酷くて、遅くなってしまった。学校について、残り10分足らずってところだったのでゆっくり行くことにした。丁度バレー部の朝練が終わったところなのか、バレー部の人たちがチラホラ階段を上がっていくのが見えた。
…ん?なんかデジャヴ…。

「真紘」

ビクッと肩が震えた。てっちゃんの声だ。もしかして後ろを振り向いたら彼女さんが腕を組んで…いやいや、ないよ、ないない。そんなまさか…。「ねー、行かないの?」そんな言葉が聞こえて急いで振り向くと、知らない女子が腕を組んで――

「も〜、早く行こ!」

その声はてっちゃんの隣にいたカップルだった。何だ、見間違いか、本当吃驚させないでよ朝から心臓に悪い。…というか、振り向いてしまった。パッとてっちゃんのほうに視線を向けると、てっちゃんは罰が悪そうに視線を下に向けた。

「…昨日はごめん」

ガシガシと髪の毛を掻きながらてっちゃんは言った。LINEでも謝ってくれたのに、ここでも謝ってくれるんだ…。私はトートバッグの紐をぎゅっとにぎった。

「うん、大丈夫。気にしてないから…」

今はなんとなくてっちゃんの顔が見たくなくて、思っても無いことを言ってしまった。もう用は無いよね。何だかまた泣きそうになってしまった。もう分からない、あ、あの男の子の言ったことはもしかしてこのことかな?研磨が言ってたことはこのことなのかな?ちゃんと、ちゃんとてっちゃんを見てってことなのかな…。

「…てっちゃん」

てっちゃんって、何で呼ぶようになったんだっけ。ああ、そうだ。てっちゃんのことが好きな女の子がいて、その子と一緒に鉄朗って呼ぶのが嫌で、てっちゃんって呼ぶようになったんだ。

「今日一緒に帰ろ。遅くてもいいから待ってるから」
「え…」

研磨の言ったこと、分かった気がする。もっとてっちゃんのことを分からなきゃ。きっとてっちゃんが怒ったことは私が何か悪いことをしたからだと思う。その理由が分からないから聞くしかないんだ。そんで、悪いところを聞いて直せるところは直して、てっちゃんにちゃんと好きになってもらおう。

「教室で待ってるから。じゃあね。またあとで」

そう言って軽く手を振って踵を返した。大丈夫。8時になろうとも9時になろうとも待ってける自信はある。てっちゃんのためなら何時間でも待ってあげるから。だから、私、ちゃんとてっちゃんのこと分かってあげたい。

20150907


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