てっちゃんのバカ、バカ。
私が何したっていうのさ。
何で言わないのさ。何でむかつくっていうのさ。意味わかんないよ、てっちゃんに嫌われた。どうしよう。バカ。どうしよう…。

「真紘」
「…研磨ぁ」

ズビッと鼻水をすすりながら研磨に駆け寄る。公園でブランコをギーコギーコと揺れていた時だった。ハァ、ハァと息をつきながら研磨は私のほうに歩いてきた。

「何してんの。親に連絡入れたの?俺んとこまで電話来たんだけど。てかLINE見てよ」
「携帯電源切ってた…。でも、ちょっとそこでてくるって言った…」
「全く、帰ってご飯食べて出て行くって真面目なのか真面目じゃないのか…変なところでバカだよね」
「研磨までバカっていう…」
「もう、帰ろ」
「……てっちゃんはこのこと知ってるの?」

ぎゅっと手を握り締めながら聞くと、研磨は首を振った。なんだあ、としょんぼりとすると研磨は私の頭を優しく撫でた。そして、ゆっくりと私の歩幅に合わせて歩き出す。

「もし知ってたら、俺よりも見つけるの早いよ」
「なんでー…」
「クロが一番真紘のこと知ってるから」
「付き合い長いだけじゃん…」
「まあそれもあるけどさ、それだけじゃないんだよね」

ハァ、と研磨はため息をつく。よくみたら制服だ。もしかして制服のまま着替えず来てくれたのかな…研磨優しい…。てっちゃんと違って。

「…てっちゃん、今日私のこと何か言ってた?」
「どうかな、何も言ってなかったかも」
「そっか」
「でも不機嫌だった」

バッと顔をあげると研磨はこっちをみていて、ふっと笑った。な、な、何。私が原因だとでも!?私が悪いとでも!?なんかここまで来たら自分が悪いんじゃないかって思えてきた。だっててっちゃんが不機嫌て、あんまり見たことないし。

「全く、真紘もクロも、周りのこと見えてないんだからさ」
「…ごめんなさい」
「反省してるならいいよ。ていうか真紘もそろそろ気づきなよ」
「何が?」

研磨はめんどくさそうに言った。何に気づけばいいのさ…。私ってそんなに鈍かったっけ?何かあったっけ?てっちゃんどこか変わったっけ?そういえば髪型…いやあれは昔からだし、寝癖みたいなもんだし。じゃあなんだろ、何なんだろ。

「クロのこと、よく見て」
「すっごい見てるよ!?」
「外見とかじゃなくてさ…」

てっちゃんがかっこいいとことか、私よく知ってるし、よく見てる。バレーの試合とかてっちゃんにも研磨にも言わなかったけど頻繁に見に行ってたし。鼻血出したことあるし。これは言わないけど。てっちゃんがバレー頑張ってるのも知ってるし、研磨が凄いのも知ってるんだから。

「もうめんどくさい」
「傷つく…」
「真紘はさー、クロのこと本気で好きなの?」
「あ、当たり前だよ!何年片思いしたと思ってるの!?」
「何年もとか言ってるけどさー気持ちひけらかしすぎて冗談って思われてるんじゃないの」
「…分かってるよ、でも、真面目に本気になんて、そんなことして引かれたらいやだから」

今まで誰にも言わなかった言葉。本当はいつも思っていて、でもそれを隠そうとテンションあげて、てっちゃんに好きだって抱きしめて…。別にそれでもいいやっておもって。自分の気持ちを言えててっちゃんを抱きしめれたら。それだけで幸せな気分になるし、引かれるぐらいならこっちのほうがマシだって。

「…やっぱバカだ」
「だから何で、」
「バカなもんはバカ。ほら、家着いたよ。じゃあね」
「ええっ研磨!」
「当たって砕けろって言う言葉もあるよねー」

じゃあね、と手をふる研磨に「送ってくれてありがとう!」と私は手を振った。ただいまーと家に帰ると「何時間もどこいたの!」とお母さんに怒られた。あれ、そんな立ってたんだ…。そのあと説教を散々されて、自分の部屋に入った。電源をつけると、てっちゃんからLINE来てて、「今日はごめん」って。私は未読のままLINEを閉じた。そのままベッドに寝転んだ。

「バカって何…」

もうよくわかんない。恋ってこんなに難しかったっけ。


20150906

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