チョコをぱくっと食べた。あー甘い。恋もこんな風に甘く出来てたらな、なんて詩人みたいなことを言ってみる。今の私すっごいポエマーになれる気がする。このチョコは美味しすぎてやばい。裏に返品不可!って書いてあるから面白いよね。

「赤葦ー食うかー」
「おう」

手を差し出されたので包み紙を渡す。赤葦って、私のこと本当に好きなのかな。ぼーっと見つめてみると、「何」って素っ気無い返事された。

「赤葦ー。君の好きなものって一体なんなんだい」
「バレー、菜の花からし和え」
「…他にないのか」

そう言うとチョコを食べて考え込んだ。ねえ、その中に私がいないってことは本当はわたしのこと好きじゃないの!?え、だって、え?私たち付き合ってるよね?どうしたらいいんだろう。この場合私と赤葦は形だけ付き合っていて、私だけ片思いしている状態なのかな。うわ、ソウ考えたら超辛いんだけど。

「このチョコとか」
「…え、これ好きだったの?何だあもう一個あげる」

さんきゅ、と言って赤葦はまた食べた。て、そういうことじゃなくてさ。もっとさ、ないわけなのかな。赤葦はもう話が終わったのかバレーの本を読んでる。ねえもう!バレー好きなあんたが好きだけどさ!私のことはどうなんだよ!なんて、口が裂けても聞けない。私そういうのは意地張って聞けないタイプなんだもん。

「お前って言いたいこと言えないタイプだよね」
「急に何」
「ふと思ってさ」

じゃあ私が言いたいこと気づいてるのか?ん?って顔を覗いてみるけどやっぱり無表情で。やっぱり気づいてないんじゃん。言えないし。ばかだな自分。赤葦もバカだけど。

「お前の好きな人って誰」

え。そりゃあ隠すまでもなくあなたですけど。そんな当たり前のことなんで聞いてくるんだよ。「目の前にいる人ですけど…」とチョコの包み紙を開けながらそう言うと、赤葦はパラッとページをめくって「ふうん」とだけ言った。何だよ!結構勇気振り絞って言ったのに!塩対応反対だぞ!

「『好きなもの』はさ、そんぐらいしか思い浮かばないけど、好きな人って言われたら真っ先に名前って答えるけど」
「……」

私の質問が悪かったってことなのか、な。でもさでもさ。それでもやっぱり名前が好きだって言ってほしいじゃん。まあ、今言ってくれたようなもんだけどさ、ていうかていうか。

「今聞いたのはなに」
「好きなものは知ってるから、一応聞いてみた」
「何それ。言わせたかっただけでしょ!」
「あたり」

そう言ってべって舌を出してくるから、頬をびよんびよんってつねる。ばかばか、赤葦のばーか!そんなこといってたら浮気しちゃうぞ!重くなっちゃうぞ!いいのかよ!私これでも部活は何時間でも待てるし俺のかわりにアレコレしてほしいって言われたら本当になんでもしちゃうんだぞ!いいのかよ!…心の中で言っても、赤葦にいえなかったら意味ないのに。言えなくて、手を離すと赤葦はパタンと本を閉じて。

「名前」
「…何さ」
「俺は結構名前好きだけど」
「はっ!?急に、な、に」
「不安なのかなって。俺誰にもでもこうだし、付き合っても対応あんま変わんないけどちゃんと愛はあるから」
「…は、くっさいなーもう」

でも顔は熱いんだよね。生意気な口聞いても体は正直で。はー、もう。「このチョコみたいに返品不可でお願いしますよ」って今度は口に出してみた。そうしたら、赤葦はふはっと笑って「返品する気ないし」って。何だお前、イケメンかよ。


20150830
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