研磨って、ずるい。
いっつもその猫みたいな目にじーっと見つめられたりしたら、そりゃもう目が離せないよね。なのに研磨ってば、いっつもその瞳をゲームに向けてるんだから。

「けーんまっ」
「…ちょっと今良いところ」
「さっきもそういった!」

彼女であるあたしを放っておいてゲーム?上等じゃない。こうなったら構ってもらうまでひっついてやるんだから。後ろからぎゅっと腕を回してすりすりと頬を研磨の背中にこすり付けた。なんか今してること、猫みたい。研磨の匂いを嗅いでる自分は少し気持ち悪いななんて思ったり。でもさ、研磨が構ってくれないのがいけないんだからね。

「名前、くすぐったい」
「研磨が構わんからじゃ、バカモノ」
「わっ落ちる、落ちる…」

一体何のゲームしてんだよ。もうバカ。でも研磨の気持ちになってみたら、自分が今熱中してるゲーム中に邪魔されたら嫌かな、なんて考えてあたしはピタッと動きを止めて、そのままこてん、と背中に顔を預けた。暖かい背中。細いくせに、あたしを抱っこできるぐらいの筋肉はあるから困る。ゲームばっかりしてるのに、あたしが話しかけたら話を返してくれるところとか、何か困る。あたし研磨に振り回されてばっかりじゃん。ばーか、って呟いて、目を瞑った。

すっかり寝てたみたいで、目を開けるとちゃんとあたしは寝転がっていて、吃驚した。あれ、あたし変な体勢で寝た気がするのに…。いつのまにかタオルケットまでかかっていて、ごしごしと目をこすりながら横を向くと、間近で研磨が寝ていてびくっと声にならない声が出た。ち、近い…。少し仰け反って、横向きに直して研磨の寝顔を見つめた。うーん、何て可愛い寝顔なの。独占しちゃっていいんだろうか、これ。ていうか研磨も寝てるってどういうことなんだろう。折角のお家デートが、昼寝で埋まっちゃったじゃない。でも起こすのもかわいそうだし、起きるまで見ておこうか。そんで眠くなったらまた寝ちゃえばいいし。全然おきるそぶりのない研磨に、ほっぺたをぷにっと軽くつまんだ。柔らかくて、少しだけゾクッてしてしまった。

「……けんまー」

パッと手を離した。研磨はそれでもおきない。ばーか、いい加減起きてよ。いつまであたしをほったらかしにするわけ。いい加減名前寝ちゃうんだから。ぐっと上半身だけ起こして、研磨の髪を軽く分けて、おでこにキスを落とした。もし研磨があたしと同じことしてたらな、何て思いながら、髪をさらさらと触っていると、突然パチりと目を開けた。

「おはよ、研磨」
「…おはよ」

眠そうに返事をして、欠伸をした。可愛いなあ、もう。あたしはまた寝転がって、研磨と同じ目の高さで、ニコッてする。研磨はゆっくりと私の背中に腕を回してぐいっと引き寄せた。

「わ、なに」
「…さっきはこんなに引っ付いてたのに」

研磨の顔が、近い。もう少しで、口が触れてしまいそうだ。息がかかる距離で、あたしはドキドキとしてしまった。ぱっと顔を下にそらすと、研磨はあたしの前髪をさらりと分けて、おでこにチュッと軽くキスをした。びっくりしてバッと顔をあげると、その猫のような瞳であたしを見つめた。

「さっきしたから、お返し」

そういって私の頭をぽんぽんと撫でる。何それ、もうどうしたらいいのかわかんないよ。研磨はあたしから目をそらさない。そうだ、君の瞳はいつだってあたしを見ていたんだ。その猫のような瞳で、いつもあたしを見て、目がそらせない。あたしは研磨にぴたりとくっついた。

「ゲームもいいけど、あたしにも構ってよね」

なんて、わがままいってみたけど。研磨はクスクス笑って、「うん」とだけ言った。あたしはそのまま目を瞑った。もっと引っ付いて寝ちゃおうかな。


20150830


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