「おい苗字!俺の教科書勝手にパクってんじゃねーよ!」
「ちょ!人聞きの悪い!及川君がいいよって言ってたから借りたんじゃん!そして返しに来ました!」

はい!と渡すと「及川は俺じゃねえ!」って軽く殴られた。痛いけど別にへこたれないもん。岩泉はいっつも私を怒ってる気がする。購買でパンが中々買えなかったら「お前チビなんだからもっと前行けよ!」なんて言いながらパン買ってくれるし、体育で膝小僧すりむいたら「女なんだからあんまし怪我すんな!」って怒りながら絆創膏くれるし。及川君と喋ってると「バカうつるから喋んな!」って言うし。もうよく分かんない。…と前までの私は思っていた。だけど、あるとき(暇な時間)私は考え付いたんだ。この岩泉の怒りは全てあれなんじゃないかと…!

「もう、岩泉。そんなに怒んないでよ」
「はあ?お前が怒らすようなことしてんだろ」
「岩泉あたし考えたんだ。ちょっと今から発表していい?」
「は?」
「あのね」
「急に始めんなよ」
「岩泉が毎回こうして怒ってくるのは何かなって考えてみたんだ。今からそのことについて発表しまーす!」
「意味わかんねえよ」

そうやって被せてくんなよ岩泉。だけど今日の私は違うぞ。キラキラと目を輝かせて、ずいと岩泉のほうに顔を寄せる。

「いつも岩泉が怒ってるのは…私に対する愛があるからです!すなわちこれは愛の力!」
「…は?」
「もう岩泉。ツンデレとかもう古いぞ〜。まあでもそんな岩泉も私はすっ…いた!」

ボコッと殴ってきたから頭をおさえながら「痛いじゃん!」と吠えると、「うるせえ、教室帰れ!」って怒られたから、本当に帰ることにする。全く、これはいい線いったと思ったのになあ。はあ、とため息をつきながらトボトボと帰っていくと及川君が私に手を振っていた。

「今さっき岩ちゃんと何の話してたの〜?」
「愛の話」
「何それ!岩ちゃんに言ったの?」
「言ったら殴られたー」

及川君はゲラゲラ笑うし、もう教室戻ろうとしたら及川君が「岩ちゃんも大変だー」なんて言うからぐりんと振り返った。

「…やっぱあれかな、いっつも私に怒って力使い果たしちゃって部活できてないかな」
「いやそれはないよ〜」
「…私努力しよう!岩泉にツンデレさせないようにする!もう怒られないようにするね!」
「いやいや、名前ちゃんはそのまんまでいいよ〜」

そしてまた笑い出す及川君。もう何なんだ。ぷくーと頬を膨らますと、片手でぶちゅっとその頬をつぶして変な音が出た。「もー及川君!」と怒るとまた笑う及川君。ちょっとイラってきたぞ。

「お前らうっせーぞ!」

お、岩泉が出てきた。私はビクッと肩を震わせ、しゃきんと姿勢を正す。

「…何してんだ」
「い、岩泉に怒られないように…迷惑かけないようにするため…」
「…アホか」

こつん、と私の頭をまた叩いた。でも、全然痛くない。

「そんなことしたら俺から話しかけに行くの減るだろ…」
「…えっ」

廊下と言う喧騒の中(及川君は相変わらず笑ってるけど)、岩泉の声だけが私の耳に入ってきて、岩泉から目が離せなくなっていた。

20150830
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