「茂庭君っ」

手を振って走ってくるのは同じクラスの苗字。工業高校には珍しいくらいの女子してる女の子。そんな女の子に、俺は片思いをして二年。長いもんだなあ。彼女はニコニコとしながら、片手にバスケットを持っていた。

「これ、いつもの差し入れだよっ」
「おーいっつもありがとな、二口に渡しとく」
「…え、っと」

差し出されたバスケットをのぞくとサンドイッチが入ってた。うまそうだ。
彼女は二口が好きなんだ、と気づいて数ヶ月。そりゃ気づいた時は死ぬほど辛かった。でも悔しいけど美男美女でお似合いだなって思った。二口が真剣に話を聞いてて、彼女は少しだけ下を向きながら話していて、そこには二人の世界が出来てて俺には入れないんだ。なんでやめないかってっいうと、俺なりのけじめってやつで、終わるなら告白してから終わろうってやつ。まあ、中々告白できないんだけどね。

「も、茂庭君が好きなの良くわかんなかったから、たくさん入れてきたんだ」
「気遣わなくていいのに」
「…だって」

彼女はたまにごにょごにょと何を言っているかよく聞こえないときがある。そういうときは、あんまり聞いて欲しくないんだろうと勝手に察して聞いてない。差し出されたサンドイッチがうまそうでよだれたれそうだ。

「あれ?茂庭さんに名前さん」
「お、二口。苗字が差し入れ持ってきてくれたぞ」

そういって二口に差し出すと、二口は無表情でそれを抱えて、そのあと「ありがとうございます」とお礼を言った。なんだ、そっけないじゃないか。喧嘩でもしたのか?俺はそう思いながらも「よかったな!」と二口の肩を叩いた。二口は痛いですよ、と少し笑い、「俺あんまお腹空いてないんで茂庭さんに全部あげます」といってその場に離れた。なんだあいつ、折角の苗字の差し出れを。

「あいつ失礼だな。折角苗字が作ってきてくれたのに」
「…茂庭君もお腹空いてなかったら、いいから」
「全然!超食べたかった!本当は二口に食わせたかったんだろうけどな、俺でごめんな」

そういって中のサンドイッチに手をかけた。うわ、めっちゃいろんな種類ある。すげーな、美味しそう。早速サンドイッチを頬張った。

「…たし…ほし…よ」
「ん?」

少しだけ聞き取れたから聞き直してしまった。苗字は少し顔を赤く染め、髪をくしゃりと撫ぜた。

「私茂庭君に食べてほしかったから、すっごい嬉しいよ」

苗字の優しい声に俺はサンドイッチを喉につまらせそうになった。苗字はそれだけ言って歩いて帰ってしまった。
えーと、今回の差し入れは二口じゃなくて俺に食べて欲しかったのかな。なんで俺なんだ?よくわからないまま俺はいつの間にかサンドイッチを全部食べ終えていた。

20150829
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