確かに、女の子と話してもいいって言った、言ったけどさ。
アレは何?何でそんな親しげなの。いやおかしいよね。肩とかばんって叩いちゃってさ、女の子。すっごく意味がわかんないんだけど。
そりゃあ嫉妬深いのって嫌われるとか考えてたら女の子とあんまり話すなとかいえないじゃん。しかも相手も今まで彼女とか耐えない人だったし。そんなの、重い女なんて無理でしょって思うじゃん。
だからさ、だからさあ…!

「あいつ一発ぶん殴っていい?」
「いいぞ」

隣にいる岩泉に拳を見せながらキレ気味に言うと真顔で頷かれた。さすが岩泉分かってる。

「大体あいつ本当何なの。ねえ教えて岩泉」
「クソ川のために時間を費やしたくねえ」
「本当それだよね。あたしももう何で好きなのかわかんないや」

どうやって付き合えたかもわかんなくなってきたや。何だっけ、あたしが好きで、何か冗談で付き合ってみたいなこといったら本当に付き合ったんだっけ。ほら、付き合ったキッカケもこんななのにあたしがモヤモヤしてなんか本当バカみたいだ。

「あ、何か袖引っ張り始めた」
「行け苗字。女子もついでに怒りに行けばいんじゃね」
「ばっかーあたしがそんなことできるわけないじゃない」

だって結構可愛いし。結構お似合いだし。あたしが入る隙…ないし。もう本当なんなの及川徹。やめてとか言ったらどうなのさ。今でも腸が煮えくり返りそうなのに。今まで耐えてきたあたし、凄いと思う。

「分かった岩泉。あたしはもう見ないことにする」
「いいのか」
「うん、だって嫌だとか言って重い女とか思われたら嫌だし」
「…あいつはそんなこと思わねぇんじゃね」

え?といえば岩泉はふいっと視線をそらして。あいつが?思わない?でも確かにあいつからフッたとかいう話は聞いたことない。全部フラれて見たいな…。こういうこと?こういうのを見てフる人が多いわけ?絶対そうだ。あんた女子と話しすぎなのよ。

「大体なんであたしがいる前で毎回話すわけ。意味わかんない」
「……そろそろ気づいてやれよ」

何に対して?そういうと岩泉はため息をついて。え、え、何。あたし何に気づけばいい?あいつの前髪今日変な風に跳ねてるとか?いつもより眠そうとか?

「あいつもバカだけどお前もバカだよな」
「待って待って。おかしい岩泉。あたし何気秀才なの知ってた?」
「あほ」

もう何なの!意味わかんない!!ぷりぷり怒りながらあたしは教室の中に入っていった。あいつも意味わかんないし岩泉も意味わかんないし。とりあえず死ね及川徹。

「苗字、CD持ってきたけど」
「あ、あんがと」

クラスの男子にあたしと同じ趣味を持った人がいて、CDを持ってきたみたいで。あたしはそれをもらって、パッケージを見る。うわ、やっばい。

「いいね」
「だろ。でさ、そのバンドのライブのチケットがあまってんだけど良かったら…」
「行きません」

ぐいっとあたしの肩を引っ張って、そのままあたしの席へと連行。無理やり座らされ放心するあたし。…えーと。

「何」
「名前ちゃんなんで男子にCDとか貸してもらってんの」
「趣味が合うから貸してもらってるだけだよ」
「ライブに誘われてましたけど」
「いや、行かないよ」

一応あんたの彼女だし。あんたは行くかもしれないけどね、なんて心の中で毒づく。

「あのさあ、名前ちゃんは俺のこと好きじゃないの?」
「はあ?そんなのこっちのセリフなんですけど。いっつもいっつも女子と喋ってさ」

しまった、ついぽろりと出てしまった。でも、今のこいつの発言は許せなかった。あたしがいつもどんな気持ちなのか知ってんのか。こうなったら重い女でもいい、言ってやる。

「あんまり女の子と仲よさ気に話すとか…やめてほしいんですけど」

うわー言ってやるとか思ったけどやっぱりいざ言ったら後悔した。これであたしは重い女に成り下がったわけだ。怖いな怖いなと思いながら見上げると、何だか顔が嬉しそうだった。

「わかった」

待って、なんでそんな嬉しそうなの?よくわかんないし…。はあ、とため息をついて時を戻したいなとか考えた。あ、時を戻せる映画とかあったなー。及川はあたしの手を握って、嬉しそうに笑った。

「名前ちゃんもヤキモチとかやくんだね」
「…ま、それなりに」
「俺もしかして愛されてる?」
「調子乗んな」

べって舌を出すとこいつはえへへと笑ってあたしの頭を撫でた。ど、どうしたの。何が起こったの。今日すっごいデレてくるね。

「お、及川くーん?」
「あ、名前で呼べって言ったのに」
「と、とおる」
「そうそう」
「どうしたのかな?」
「へへ」

何だろう、すっごい可愛く見えてきた。うざいっていうより、可愛い。

「好きだよ」

にこっと笑って、あたしの頬をびよーんて伸ばしてきて。もうよくわかんない。とりあえず顔が熱くなってきたから、暫くこいつと離れることはないなと思った。

20150923

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