「ちょっと国見、あんたまた寝てんじゃないわよ」
「……」
「無視すんな」

ばこっと教科書で頭を叩くと、ゆっくりとムクりと起き上がった国見。あ、めちゃくちゃ眠そう。
隣の席の国見はいっつも授業中寝ている。起きてるの辛いとか言うわりにすぐ寝るし。それであたしが毎回起こせって先生に言われてるんだ。ったく、こいつどんだけ寝れば気がすむのよ。

「あたしもうあんた起こすのめんどくさいからおきてて」
「それは無理」
「塩キャラメルあげるから」
「…考える」

とりあえずちょうだい、と手を伸ばされたので仕方なくあげる。あたしも相当国見に甘いな。はあ、とため息をつきながら国見を見つめる。こいつ、背高いくせに座高は低いんだな。くそ、足長いってことじゃん。

「…何?」
「いや、背の割りに座高低いなって」
「そーゆー苗字は背低いのに座高高いね」
「しね」

なんなのよ。確かに背はギリギリ150だけどさ。きっと国見を睨めばニヤニヤと勝ち誇った顔をされた。くそ。

「まあテストはあたしのほうがいいしね」
「何言ってんのこの前小テスト俺より悪かったじゃん」
「あれは勉強しなかっただけだし!」
「俺もしてないよ」
「嘘つけ」
「嘘じゃないし」

悪かったといっても国見より1点低かっただけだ。それをこいつは…!いちいち勘に障るようなこと言ってから。早く席替えしたい。こいつの隣はいい加減イライラする。

「テストまた勝負しようよ」
「…ジュースおごってくれんの?」
「次は負けないから」

急に何を言い出したのかと思いきや。この前テストの点数負けてあたしにジュースおごったくせに。またやるなんて、ね。ふんって笑ったけど無視された。国見は起きてるときは何気話しかけてくる。大体イライラすることばっかりだけどね。

「俺が買ったら自販機で一番高い奴買ってもらお」
「じゃああたしもそうする」
「…プラス塩キャラメルで」
「はあ?なめてんの」

こいつ本当塩キャラメル好きだよね。今さっきあげたばっかりだっていうのに。口を開けば塩キャラメルだのなんだの。こいつ絶対部活もちゃんとしてないな。ゆるーくサボってそう。

「国見先輩に生意気言ってそう」
「言ってないし。ていうか俺レギュラーだからね」
「ガチ!?あんた上手いの!?めちゃくちゃサボってるイメージ!」
「ひど。たまにサボってるけど」
「ほーらね」
「でも結構頑張ってるほうだと思う。試合見に来る?」
「あはは、国見が頑張ってるのを見に?何かあたしお母さんみたい」

笑える。あたしが国見のためにわざわざ休日学校に来て試合を見るなんてガラじゃない。でもちょっと国見が頑張ってるところみたいな。あわよくば写メとって家帰ってにやにやしたい。

「お母さんじゃなくてさ」
「ん?」
「普通に俺に会いに来る感じで」
「えー。休日まで国見に会いたくない」
「…俺今傷ついた。ガラスのハートなのに」
「あははは冗談!」

真顔でいうから本当にいってるのか冗談で言ってるのかわかんない。まああたしは冗談だけどさ、国見はじーっとあたしを見てくるから、笑いながらも何?って言ったら、

「…じゃあ試合に見に来てね」

真面目に、あたしに言ってくるから吃驚した。
そんなに見に来てほしいの?休日に学校行くの超めんどくさいなー。
でもあの国見が見に来てって言うから、ちょっと行く気になったかも。

「仕方ないなー。国見が頑張ってるの見に行くよ」
「うん、苗字来たら頑張れそう」
「あは、それどういう意味?」

また冗談。クスクスと笑いながら言うと国見はムッとしたのか、ぷいっとそっぽを向いた。「おーい国見君?」なんて笑い混じりにいうと、チラりとあたしのほうを見て。

「そういう意味」

とだけ言ってまた顔を机に伏せた。
…ん?つまりどういう意味なんだろ?
あたしは少し考えることにした。

20150920

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