「岩泉君って何でモテないのかなあ」

同じクラスの岩泉君。すっごい男気溢れて、女子には優しくて、とにかくかっこいいのに。何でだろうなあ。友達はその言葉を聴いて呆れたように言った。

「でた。名前のなんでかなあ」
「何それ〜」
「ほんと岩泉君だいすきだよね」

そういう大好きとかではないんだけど。岩泉君は私にも優しくしてくれるからいい人だなとは思う。たまに授業中寝てるけど可愛いなあって思うし、話しかけても笑顔で対応してくれるのが嬉しいなって思う。ただ、それだけなんだよね。

「だって岩泉君いい人だもん。嫌いな人はいないと思う」
「すっごい推すね」
「及川君より岩泉派です」
「あはは及川君泣いちゃうね」
「だって話したことないもん」

なんとなく及川君も女子に優しそうだと思う。いっつもニコニコ笑ってるし、岩泉君に毎回怒られてるのも見る。仲良いなあって思う反面、岩泉君とあんなに仲良くて羨ましいなって思う。私ももっと話したいのに。こういうとき女子である自分を恨む。あんまり話してたら色々噂されてめんどくさいから。

「はあ。それで、何でモテないんだと思う?ていうか私が気づかないだけでモテてるのかなあ」
「そうかもしれないね」
「うわあ、ショックだ、それは」
「…なんで〜?」
「私だけだと思ってたから、岩泉君のよさ知ってるの」

モテないのかな?って聞くけどなんだかんだで自分が岩泉のよさを一番知ってると思っていたから。なんていったら、今までの話色々おかしくなっちゃうけど。でもモテない理由を他に探していけば私の言った言葉はそれほど重要でもなくなる。

「もー付き合っちゃえば?」
「だから、そういうのじゃないんだって」
「友達としてってこと?」
「そうなのかな。そう言われると違う気がする」
「めんどくさいなー」

わ、めんどくさいって言われた。私、めんどくさいこと言っちゃったのかなあ。でも岩泉君を好きって思うのとは何か違うし、かといって友達って言われると違う気がするし、一体何なんだろうこの気持ちは。

「あ、でも課題提出してたら岩泉君が半分運んでくれたのにはドキッとしたなあ」
「おお」
「高い場所にある本もとってくれたときも」
「あら」
「いっつも会ったら話しかけてくれるか挨拶してくれるんだよねえ」

なんか、ニヤニヤしてる。
私は他にもあるかなと探したけど、まあたくさんあって言い切れないからここで終わりとする。あれ、私結構岩泉君にドキドキしてるんだなあ。

「やっぱり好きなのかなあ」
「好きなんじゃない?」
「そうなのかなあ」
「きっとそうよ」
「そっかあ」

私岩泉君が好きなんだ、そうなんだ。
そうかもしれない。なんとなく今岩泉君のこと考えたらドキドキしてきた。こういうことなのかな。わあ、私岩泉君が好きだ。

「ありがとう、私が岩泉君のこと好きだって気づかせてくれて」
「どういたしまして」
「チャイムなるからそろそろ席戻るね。ばいばーい」

そう言って私は手を振った。
友達も振ってくれた。

後ろの男がムクりと起き上がり、はあ、とため息をついた。
女子生徒はニヤニヤとしながら後ろを向く。

「だ、そうですよ、岩泉選手」
「……やっとかよ」

頬杖をついて、窓を見つめた。
この二人が付き合うことになるのは、もうちょっと先の話。

20150920

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