目が合うって、自意識過剰かな。
最近同じクラスの岩泉君と目が合う。席は私が後ろで、岩泉君は結構遠くて、右のほうの前から二番目に座ってるんだけど。ふとしたときにぱっと岩泉君を見たら丁度目が合う、感じがするの。私は何だかドキドキしていつも目をそらしてる。それに岩泉君も何も言わないから、やっぱり気のせいなのかなって考えてる。
あ、また目が合った。こ、今度は目をそらさないでいよう…。と思ってじーっとみていたら吃驚したのか目をまんまるとして私を見た。え、やっぱり目が合ったのかな。
「岩泉君、何かな…」
これは自意識過剰じゃないよね。汗を飛ばしながら岩泉君に話しかけると、「や、えっと」と口ごもった。ん?何なんだろう。やっぱり違うのかな。
「いや、まさか話しかけられるとは思わなくて…」
髪をガシガシと掻きながらは、照れたように言う岩泉君。えっやっぱり、私のこと見てたんだ。それにしてもなんだろう。…もしかして!ごみがついていたのかな、と私は顔を手で触るが良く分からない。
「ごみついてた?」
そう聞くと、「いや、ちげぇ」と岩泉君は即答した。んー?じゃあ何だろ。
「私に言いたいこととかある?のかな?」
何かあるのかなあ。もしかしてずっと話しかけるタイミングをうかがってたとか。それだったらすっごくごめんなさい。ドキドキしながら答えを待っているが、岩泉君は喋ってくれなくて。
「つーか、お互い声でっかくして話さないといけないよな。ちょっとそっちいくわ」
そう言って私の前の席に座る岩泉君。今が休憩時間がだからいいけど、チャイムがなったら帰るの大変だろうなあ、なんて漠然と考えた。
「…なんか岩泉君とこんな近くで話すの久々だね…緊張しちゃうや」
岩泉君とは席が隣になったこともあってよく話してた。授業中にノートを見せたこともあるし、何かと二人組みを作れっていうのが多かったからペアによくなっていた。今は席替えして遠くなっちゃったけど。
「う、ん。俺もなんか緊張する」
え、岩泉君も?二人して緊張するなんて、周りからみたらきっと滑稽なんだろうなあ。にまにまと笑うと、何だよ、って岩泉君は私の頭を軽く叩いた。
「で、私に何かあったの?」
「あー…いや、えっと。特にねーんだけどさ…」
「そうなんだ?」
特に無いんだ。暇だったから見てたのかな。いやいやそんなことないよね。それとも私見られるような顔なのかな。面白いとか、そんなのかな。
「…わかんね?」
「何が?」
「俺が言いたいこと」
「わかんないなあ」
岩泉君、いっつも真顔だしなあ。あんまり笑わないし。でも、たまに笑うとすっごい可愛いんだなって思ったことあるな。席離れてからは見てないなあ。
「だから…その、よ」
「うん?」
「お前と話す機会を伺ってたわけ」
「う、ん?」
私と話す機会?そんなの、いつでも話しかけてくれればいいのに。岩泉君は何だか面白いなあ。
「いつでも話しに来てよ。私も話しに行くよ」
ニコッと笑うと、岩泉君も、「おう」と。
「それにしても岩泉君がそんなこと思ってくれてたなんて、嬉しいなあ」
「そりゃあお前のこと好きだからな」
「えっ?」
ぽろっと出てきた言葉。それはまるで告白みたいじゃないか。え?告白なのこれ?ていうか、今私のこと好きっていったよね?岩泉君は少しだけ顔を赤くしてて。
「あー言っちまった…でも言わなきゃお前一生わかんなかったかもしれねーし」
あれ、何か私まで顔熱くなってきた。
「まあ、意識しといて」
ぽん、と私の頭を撫でてスクッと立ち上がった。鳴り始めるチャイム。お互い赤いであろう顔。岩泉君は私を見て、ニコッと笑った。
あ、笑った。
20150917
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