風邪を引いた。
二日は寝込んでいるからそろそろ暇になってきた。最初は寝たり好きなDVD見たりと楽しい暮らしをしていたが、そろそろ限界。暇。…はあ。誰かお見舞いに来てくれないかなあ。冷えピタを張り替えようとベッドからゆっくりと起き上がった。家誰もいないから何か怖いなあ。携帯でLINEを見るが皆バイトとかで家に着てくれそうもない。まあそりゃそうか。お見舞いにきてなんて図々しいよね。…ふと、お気に入りの場所にある男のLINEを開いてみたが、何もトークはきてなかった。そういえば今日何曜日だっけ、とフラフラしながら日めくりカレンダーを見に行こうとしたら。
ピンポーン。インターホンが鳴ったのでよろよろと玄関のほうに行く。宅配便かなあ。印鑑どこだろう…。と思いながらもとりあえず玄関まで出て、ドアを開けた、ら。

「名前〜!」

ガバッと抱きしめてきた巨体、名は及川徹。うっそもうフラフラしてんのに…。倒れそうになったと思ったら及川はギュッとあたしを抱きしめて倒れそうになるのを助けた。もう、うるさいのがやってきたなあ…。

「大丈夫名前!吃驚させようとしたんだけどまだ全然治ってないね!早くベッドに行こう!寝て!」
「わ、分かったから少し声小さく…」

ふらふらと歩きながら自室まで戻る。まあ、及川も来るに決まってるよね。部屋に入ると「おじゃましま〜す」と鼻歌まじりにいうから困った。ゆっくりとベッドに戻る。あ、まだ全然あったかいや。

「名前が寂しいかなって来てあげたよ!」
「うん」
「少し顔が赤いのも色っぽくて可愛いよ!」
「うん」
「ねえ頭撫でてもいい?」
「うん。…は?」

やったーと言ってあたしの頭を撫でてくる及川。いやまあいいけどさ。許可とってもとらなくても。ちょっと気持ち悪いじゃん。及川はニコニコと笑ってる。はあもう調子狂うなあ。

「今日ねー。岩ちゃんが名前のこと心配してたんだよねー」
「岩泉君…いい人…」
「俺のが心配してるけどね!今日だってお見舞いに来たし!」
「悪化させちゃうかもね」

もううるさいな本当に。及川が来てくれたのは正直嬉しいけどさ。これじゃあ寝ようにも寝れないしさあ。

「あ、プリンとか色々買ってきたよ」
「あ、冷蔵庫入れとく…」
「だめだよ!フラフラだったじゃん!中見てもいいなら冷蔵庫入れとくよ?」
「うーん…じゃあお願い」
「分かった!」

ニコニコと笑いながら及川はうんうんと頷いた。はあ、プリンか…。かなり嬉しいわ、これ。どうしよう何かお礼してあげたいけど病人だしなあ…。

「ねえ及川ー」
「何?」
「お礼してあげるからあたしに出来ること言って」
「え、全然いいよそういうの!」
「あたしの気がすまない」
「…じゃあ、俺の事名前で呼んでよ」
「そんなんでいいんだ」
「え、じゃあ、他にも他にも!手繋ご!」
「そんなんでいいんだ…」

もっと何かあるかと思ったのに。「何想像したの?イヤラシイ」って言うからちょっとムカッてしたけどまあ抑えた。ベッドからゆっくりと手を出し、及川の手を握った。あ、冷たくて気持ちいいや。ぐいっと引っ張って自分の頬にくっつけた。ごつごつしてる及川の手、好きだなあ。

「きもちー…」
「両手で行こうか?うりゃ!」
「勢いよすぎ…ばちんって言ったし」

でも冷たいや…。気持ちいいし。…なんか眠くなってきた。及川の手が冷たいって、たまには役に立つじゃん、こいつも。

「名前眠い?」
「うん…」
「寝ていいよ」
「…寝るまでここにいて…手離さないで」
「うん。いいよ」
「ありがと…徹」

視界が暗くなった。気持ちいい感触。まだ及川はそこにいる。ぼそぼそと声が聞こえる。そして、耳元に息がかかった。

「すきだよ…名前」

全く、熱あがっちゃうかもしんないじゃん。この及川徹って奴は、どうも勝てそうにないなあ。でもまあ、風邪ひくのもたまにはいいかもしれない。彼氏である及川に少しだけ甘えることができたんだから。

20150910
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