榛名君は、本当にかっこいい。
野球だって凄いって聞くし、顔もかっこいいって。友達がキャアキャア騒いでいたのを思い出した。この前榛名君と帰りが一緒になって手を振ったともいっていたような。榛名君は本当にモテるなあ。でも、彼女とかそういう話は出てこないなあ。何でだろ…もしかして、好きな人いるのかなあ。

「苗字」
「あ…榛名君」

帰り道、学校に忘れ物があって取りにいっていた私は榛名君とあった。榛名君、こんな時間まで練習。凄いなあ。

「どしたん?」
「忘れ物があって。今から帰るところなんだけどね」
「じゃあ途中まで一緒に帰ろうぜ」
「うん」

榛名君。榛名君とは中学が一緒で、中学の時はそこそこ話していた気がする。高校入って話さなくなったなあ…。クラスも離れて、自然とお互いはなさない関係になっていたのに。榛名君はくあーっと伸びをした。眠いんだろうか。

「榛名君、頑張るね。こんな遅い時間まで」
「ああ…どーも」
「私はもう中学で疲れたなー」
「何してたんだっけ。バレー?」
「…テニス」
「あ、ごめん」

本当榛名君って私に興味ないよなあ。昔から奥手で、好きな人にはドギマギしてた榛名君。私のこと本当に何も思ってないからこそのこの雰囲気。ほんと、私って…なんて言葉が頭に浮かぶ。

「つーかさ、苗字と話すの久々な気するわ」
「…そうだね」
「あー、何か緊張すんな!」
「…今更?」

ふふっと笑うと榛名君も笑った。榛名君、笑ったら可愛いなあ。いつか榛名君にも彼女ができて、こんな風に笑って帰ったりするのかなあ…。そういえば野球部にマネージャーいたよね…可愛くて胸が大きい人。いいなあ、榛名君もああいう人が好みなのかな…。だとしたら、私って本当に負けてる。胸の大きさも、かわいさも。

「…はあ」
「ん?どした」
「いや、私って魅力ないなあって」
「は?」
「こんな私を好きになってくれる人なんていないだろうな、って思ったら悲しくなってきちゃって」

急にこんな話してきもいって思われないかな。思うよね。何言ってんだこいつ。みたいな感じだよね今。はあ、とまたため息をつく。私ってこんなにネガティブだっけ。こんな一面、なるべく榛名君には見せたくなかった。

「…そうか?」
「え…」
「お前結構気利くしさ、優しいし、俺がもうだめだーとか中学の時に言ってたときも一生懸命励ましてくれたじゃん。あれめっちゃ嬉しかったしよ」
「…覚えてたんだ」
「当たり前だろー」

ハハッて笑う榛名君に、心臓がバクバク言ってる。榛名君はきっと私にそういう気がなくて言ってるんだろうな。分かってる、分かってるけど…嬉しい。顔がにやけてしまう。

「ありがとう榛名君」
「どういたしまして。てかお前ってそんなこと考えんのな」
「急に思えてきちゃって」
「…苗字、普通に可愛いと思うけど」
「え」

ぱっと榛名君のほうをむくと、手の甲で口元を隠し、「結構恥ずかしいなこれ」って照れながら笑った。え、何それ。それって榛名君にとってどういう意味でいったの?私、今凄い浮かれてるよ。どうしたらいいのって叫びたいぐらい。私ってこんなにドキドキするんだ。

「は、るなくんは天然タラシだね…」
「は?」

今まで封じ込めてた気持ちが、出てきたじゃないか。もうこうなったら元には戻れない。だけどいま、この時間だけはずーっとあればいいのにって思ってしまった。


20150907
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