「西谷君って、声大きいよね」
「ん?なんだ?」
「いや、あのね、声大きくて羨ましいなって…」

私は声が小さいから。いつも小さくて何言ってるかわからないって言われる。対して西谷君は声が大きい。本当に。すごい羨ましいんだ。

「腹から出せばいいんだよ!」
「おなかから…どんな感じ?」
「なんか…腹がへこむかんじ?」
「わっ!どうかな?」
「まだまだ蚊の泣く声だな」

それはちょっと盛りすぎなんじゃあ。その言葉を言おうとしたけどノリにのってきた西谷君がコーチをしてくれるみたいだ。もっとなあ、とかこうだろ!とか楽しそうに喋る西谷君が本当に可愛いと思う。うんうん、と頷きながら、同じクラスで近くの席である事が本当に良かったと思った。

「わー!!どうかな」
「おう、随分様になってきたな。でもよう、そんな声でかくてどうすんんだ?」
「…声小さいから告白してもわかってくれなかったから」
「え!そうなのかよ!」

吃驚したように言う西谷君。そんなやついるんだな〜って感心してる。よく感心できることだよね。西谷君はそいつゆるせねえな!なんて怒り気味にいうからため息をついてしまった。

「このぐらい大きな声だったら気づいてくれるかな!」
「おう!そんなでけえ声で気づかねぇほうがおかしいぜ!」

ニカッと笑って西谷君はいい仕事をした〜と鼻歌を歌い始めた。全く能天気なんだから、私の気持ちも知らずにそんなニコニコしてさ。こっちだって好きで声小さいわけじゃないし。わざわざ西谷君の声が大きいから、羨ましいから、ってだけで話しかけたりしないよ。そんなところもわかんないからうるさいだのバカだの言われるんだよ。だからモテないんだよ。こんなにかっこよくて優しいのに。この前不注意でバケツの水を足にかけられた時も西谷君は助けてくれたし、気づいてないだろうけどレディファーストしてくれたり。知ってるんだから、バレー部で清水潔子さんって人が超美人でその人にメロメロなことも。だから、だから当たって砕けろっていう感じで告白したのに…!

「うおっ何で睨んでんだ?」
「…今から告白する」
「おお!今からか!がんばってこいよ!」
「…西谷夕君!好きです!」

どうだ、こんな大きい声でも気づいてないとは言わせない。西谷君は一瞬固まって、暫くしてその言葉の意味が分かったのか、「え?」と素っ頓狂な声を出した。

「この前告白したのに気づいてくれなくて悲しかったです!返事を今聞かせてください!」

もうヤケだ。どうせフラれるだろうけど、もういい。ここは教室だし、喧騒の中、私の告白を聞いてる人がいるだろうけど、もういいんだ。チラりと西谷君を見ると。

「…や、ちょっとまって」

焦ってる西谷君を見て、え、と吃驚した。てっきり潔子さんが好きだから無理なんていうかと思ったけど。
まだ私にも望みはある?
じーっと見つめると、顔を少しだけ赤くして視線をそらした。

「…お、おおー…」

あれ?いつもの男気溢れる西谷君は?何か、キャラ違うくない?

「…やっぱり返事は後でいいや」

そう言うと、「たすかる…」と顔を机に伏せた。もしかして告白初めて?だとしたら、だとしたら私は凄くついてる。

「…西谷君、返事待ってます…!」

少しだけ声が大きくなった私は、自信が少しだけついていた。


20150906


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