「まりさ、及川君のこと好きでしょ」
「…は?」

昼休み。パリッとポテチを食べながらそういう友達に、怪訝な顔を見せた。
あたしが、及川を、好き?

「今及川君通った時、まりの顔が乙女の顔つきになってた」
「うそ。話盛んないでよ」
「ほんとだもん」

だもん、なんて可愛いこと言いやがって。あたしはくるくると髪を指でいじりながら、はあとため息をついた。
実際、及川徹という人物はモテる。どれだけの女の子をはべらしてるのかはあたしは知らないけど、友達が言うのが確かなら確かならあたしは及川に遊ばれてるうちの一人だ。

「まーでも、及川君確かにかっこいいもんね、あんたが惚れるのも無理ない。面食いだし」
「惚れてない。あと面食いは余計」
「前の彼氏超イケメンだったじゃん。一ヶ月してすぐ別れたけど」
「……あれは…本気じゃなかったの」

思い出したくないこと思い出させやがって。あいつのことを思い出すとイライラしてきた。前の彼氏は一つ上で、イケメンだったし告白されたから付き合ったけど、いざ付き合ったらあっちも大学が忙しいだの思ったのと違うとか言われるだの挙句の果てには浮気されて、もう散々だった。
及川もそんなタイプ。きっと付き合ってそういう子だったんだ、ごめん。って言うタイプなんだよ。

「なーに百面相してるのー?」

頭をぽん、と叩かれてハッとしたら、目の前には及川がいた。え、なんで?

「まりちゃんが見えたから、声かけちゃったー」

あたしが思ってたことがわかったのか、語尾に音符でもつけそうな勢いでそう言った。あたしはとたんに顔が熱くなって、ぱっとぱっと下を向いた。及川はあたしの友達と話してる。…なんだ、やっぱりただの女好きなんじゃん。意識したらダメだ。

「あと5分でチャイム鳴るんですけど。早く帰ったら?」
「厳しいなーまりちゃん。そんなとこも可愛いね」
「キモいんだよタラシ。他の女にも言ってんだろーね」
「…ヤキモチ?」
「そーゆー感情、あたしにはありません。帰った帰った」
「もー、つれないなあ。じゃあね」

ヒラヒラと手を振って教室から出て行く及川にまたため息が零れた。
今だって、女子に話しかけられて笑顔で対応するところとか、割とバレーに対して真面目なとことか…。

「意味わかんない」

あたしは頭を抱えた。友達はそれを見てぶっと吹き出した。

20150821

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