「最近及川君、女の子と喋るの見なくなったね」
「本当。前までは告白されたらすぐ付き合ってたのに、付きあわなくなったよね」
「え?それはモット前からじゃない?」

及川のそんな噂を聞いて、あたしはハテナマークしか浮かばない。だって、あの及川が?そんな、まさか。「好きな人できたのかも」だなんて聞こえてきて、サーッと顔が真っ青になった。これじゃあ彼女作らないのなんてもう終わりに近いじゃない。焦るけど、どうしたらいいかわからない。

「何してんだ小林」
「い、岩泉…!」

バッと顔を向けると、岩泉で、あたしは涙目になりながら、「教科書貸してください…」というと、持っていたのかあたしの顔を教科書で叩いた。

「今日はこねえなって出てみたら、何でそこに突っ立ってんだよ」
「ちょっと考え事してた…。ね、ねえ。及川って好きな人いんの?」
「は?あー…いるんじゃねぇの」
「う、そ」

あたしは教科書を両手で抱えて、フラフラと歩き出した。「お、おい」と岩泉はあたしを呼んでたけど、もう無理。耐え切れない。あいつがあたし以外のこと好きだなんて。意や別にあたしのこと好きじゃないだろうけど、無理。

「まりちゃん大丈夫?また熱?」
「えっ…お、いかわ」

出てきたのは及川で。あたしはギョッと目をひん剥いた。な、なんか好きって自覚してから及川がキラキラして見える…。うざいけど、うざいけど。
でも今までこんなことなかったのに。どうしたんだろう。

「保健室行く?」
「い、かない」

尚も心配している及川。その高い背であたしを見て。何考えてんだろう、本当に。

「じゃあ、どうしたらいいんだろう。こういう時」

キョトン。あたしは及川を見上げる。うーんと腕を組んで考える及川。…え?
及川ってこういう時、「そっか、分かった気をつけてー」みたいな感じで、離れるんじゃなかったっけ。…ていうか及川、あたしに話しかけてる。あんな変なこと言ったのに。ああ、思い出したら恥ずかしくなってきた。熱が、顔に篭る。

「わ!まりちゃん、顔赤いよ!」
「ほっといて…これはち、がうの」

ダメだ、こいつと一緒にいたら調子狂う。あたしは「ばいばい」と手を振って教室に入ろうとしたら「待って」と腕を掴まれた。

「…あのさ、まりちゃんてさ、前にウサギ小屋の前で座ってウサギと戯れてたことあった?」
「………え」

まさか、あれを見られていたのか。あの、彼氏にフラれたら毎回と言っていいほど行っていたあの場所。
及川が、見たっていうの…!?
あんなところ見たって、何あいつ、哀愁漂うキモい女とかなにウサギに話しかけてんの、とか、寂しい女とか、あらぬことを考えるんじゃあ…!

「やっぱり、あれまりちゃんだったんだ…」

しかし及川は、キラキラと目を輝かせ、あたしを見てくる。及川自体が光って見えるのに、目を輝かれたらダブルパンチだ。手をばっと離し、一目散に逃げた。

20150821

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