「小林ー。お前本当にその髪どうにかならんのか」
「だからどうにもなんないよ。本当に地毛で、こうなってんだから」

今日も教師に言われたか。あたしははあとため息をついた。ジュースを買いに行った帰り、そんなこと言われるからドッと疲れがやってきた。

「もうこうなったら切るべきかな」
「え〜、まりちゃんの髪綺麗だから嫌だな〜」
「わっ」

振り向くと及川がニコニコと笑いながら立っていた。ちょ、今の独り言聴いてたのか、と少し顔が熱くなった。

「…あんたもあたしの髪みてヤンキーだのギャルだの思ってんでしょ」
「思ってないよ〜。まりちゃんだってすぐ分かるからその髪いいと思う」
「まああたしと似た髪型の人いないしね…」
「そういえば髪型ちょっと変えた?」
「えっ」

先日パーマをとうとうかけてしまった。だけど巻いたのとあんまり変わんないから、まあバレないんだろうなって思ってたけど。及川にバレてしまうなんて。

「前より可愛く見えるよ」
「……アンタはまた、そうやって…」
「ん?」
「すぐ可愛いとか言うな!」
「だって、まりちゃん可愛いし」
「からかわないでよ」
「からかってないよ、大真面目」
「……」

あたしは下を向いた。
真面目に言われても、困るし。だって、皆にも言ってるじゃない。

「そんなの、誰にでも言わないでよ…」
「えっ」
「勘違いしちゃう子、たくさんいるから」

背の高い及川と目を合わせるのは大変だ。自分の赤い顔をわざわざ見せてやった。言ってやった、言ってやったんだ。
あたしはそれを言って逃げた。急いで教室に入って、席につく。買ったジュースをあたしの頬にひっつけた。冷たくて、気持ちいい。熱くなった頬を覚ますのには丁度いい。ふんだ、分かったか及川。アンタのその言葉に勘違いしちゃう子はたくさんいるんだから。もちろん、あたしも入ってるんだから。

*

「ねー、結局まりは及川君のことが好きなの?」
「はっ?だから」
「もういい加減にさー認めたら?別に好きになっちゃいけないとかじゃないんだよ?」
「……」
「つまんない意地張ってさ、カップケーキも渡せないで、また後悔しちゃうんだからー」

呆れたようにいう友達に、あたしはゴクンと唾を飲みこんだ。
だって、あんなやつ好きになったって、告ってもフラれるだけだし、本気にしたんだ?ってあざ笑うに決まってる。
それに及川は、あたしのことなんてそういう対象にみてないだろう、し。

「及川、は…あたしのこと好きじゃない」
「好きにさせればいいじゃない。本気にさせて、告白してもらうのよ」
「そんなの…無理に決まってる。だって、あいつの周り可愛い子ばっかりで…」
「ねえ、何でそんなに恋に臆病なの?元彼と及川君はそんなに似てるの?」
「に、てない…」

及川はあたしを傷つけるようなこと言わない。
及川に弱さを見せても、態度一つも変えなかった。
あたしが意地張ってるだけで、及川は何にも悪くない。

「…あたし、及川のこと好きだ」

だって、ずっと好きだったもん。
心のうちに隠してて、誰にも言えなかった。
本当は、バレー部の練習見に行ったあの日から、及川に惚れてたんだ。
真面目にやっているあの及川がかっこよくて、気づかないフリしてたけど、本当は好きでたまらない。もっと、弱さを見せたい。こんなあたしを見て、嫌いにならないでほしい。だから、もっと素直にならなきゃ。

「フラれたら慰めてあげる」
「…まずはあそこ行ってからね」

20150821


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