「あのっ!」
「ひっはいいい…」

合宿中、よく音駒バレー部の一年のこの子に話しかけられる。正直、でかすぎて怖い。

「俺も手伝おうか!」
「えっ、いやいいよ、洗濯するだけだし…」
「一緒に持って行こうか!」
「おっ……お構いなく!」
「あっ」

な、なんで、なんでこんなに話しかけられるの!?ほんとに、ちょっとだけ怖い。初めて喋ったの昨日だし、しかも迷子になってたのを助けただけだし。……それか!彼から逃げながらようやく納得したので、そういうことな〜と思いながら洗濯物が落ちないように走った。

「待ってよ!」
「わあ!」

だけど、彼の方が足は長いし、走りも早い。すぐに追いつかれ、肩を掴まれた。ぎ、ぎ、ぎ、と顔を後ろに向けると、若干不機嫌そう。

「なんで逃げるの」
「に、逃げるっていうか…早く終わらせたかったからかな!」
「だから俺使っていいって」
「そうは行かないよ。練習で疲れてるんだから君は休みなよ」
「君…?俺の名前はリエーフだ!」
「うん、リエーフ君、休んで」

そういえばリエーフって呼ばれてたなあ。人の名前を覚えるのが苦手だからこういう時困る。リエーフ君は名前を覚えられていなかったことが不服そうだった。ごめんね。

「…苗字さんって冷たい…」
「え」
「昨日は!あんなに優しかったのに!」
「えええ…」

そりゃあ、迷子の人に冷たく当たるわけないでしょう…。ああもう困った。どう対応すればいいんだろう、こんな時。

「ごめんね、仕事終わってないから」
「じゃあ仕事終わったら俺と話してくれる?」
「うん、いいよ」
「やったー!」

もしかして、気に入られたのだろうか。迷子を助けただけで?なんて単純な人なんだ…。でもまあとりあえずは助かった。仕事に戻ろうと思ったら、目の前に音駒の主将さんがやってきた。私たちを見てニヤニヤとしながらどうしたの?って聞いてくるので、失礼だけどため息をつきたくなった。

「仕事終わったら話すっていう約束を取り付けました!」
「へ〜やるじゃんリエーフ」
「…あ、じゃ仕事に戻らせて頂きます…」
「おう鳥野のマネさん。リエーフ泣かせないであげてネ?」
「…ど、どういう意味でしょう」
「あー!もうやめてくださいよー!」

そうだそうだ。何も言わないでほしい。何も知らないまま立ち去りたい。強引に主将さんの隣を通る。

「おいリエーフ逃げられてるぞ」
「もー!余計なこと言うからですよー!」
「えっ俺のせい?」

この時ばかりは、仕事が終わらなければいいのに、と思ってしまった。いや、嬉しいんだけど、好意は嬉しいんだけど、どう受けとっていいかわからないから。
仕事が終わって、外で待っていたリエーフ君から逃げ回ったのは、また別の話。

20160307
匿名様、リクエストありがとうございました!リエーフは気になる子ができたら押せ押せで話しかけてきそうですね(笑)
素敵なリクエストありがとうございました!



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