偶然、ほんと偶然だった。
まさか会えるなんて、思わなかったんだ。

「あ〜!松川さんだ!こんにちは!」
「こ、こんにちは…」
「なぜこちらに??」
「バレーボールシューズ…新しくしようかなと」
「そうなんですね〜!」

キラキラと目を輝かせ、こっちに走って駆け寄る彼女が凄く可愛い。鳥野と練習試合をしたとき、彼女は何か手違いがあったみたいで一人で来ていたみたいで、道に迷っていたところを俺が助けた。…そしたら、こうやって懐かれてしまったんだ。

「実は私は、サポーターを日向君にあげようかなと!考えていまして!」
「へー、そうなんだ」
「すっごいボロボロになっててですね…」

彼女は、元気だ。でも迷子になっていたとき、泣きべそをかいていた。今も鮮明に思い出せる。話しかけたら、犬みたいに走ってこっちに来たんだから。

「でも、どんなのがいいかわからないから、松川さんがよければなんですけど…一緒に選んでくれませんか?」

彼女のらんらんと輝く瞳に、否定できるはずなかった。「いいよ」といって頷くと、一層瞳を輝かせ、「ありがとうございます!」とぴょんぴょん飛び跳ねた。彼女は小さいし、よく飛び跳ねるから、うさぎみたいだ。元気なうさぎ。

「膝と肘、どっち?」
「膝です!」
「…金額とかは?」
「あ、お金いっぱい持ってきたんで、少々値が張っても…!」

健気な少女だ。尽くされているあの彼が羨ましい。というか、自分のじゃないのにこんなに親身に選ぶの癪だ。だが、彼女の頼みなので仕方ない。オススメのサポーターを手にとって、「これとかいいんじゃない?」というと、彼女は「よさそうですね!」と肯定した。多分、彼女はバレー経験者とかじゃないんだろう。だからこそ困っていて、きっと俺がオススメしたものなら何でも良かったんだろうな。

「じゃあ、これ買ってきます!」
「うん、いってらっしゃい」

足早にレジに急ぐ彼女の背中を見つめ、自分も買おうと思っていたものを選び始めた。


「松川さーん」
「…苗字さん」
「へっへっへー、買いましたよ〜!」

満面の笑みで、袋を見せてくる彼女に吃驚した。俺はあれから、30分以上は選んでいたのに。買って、外に出たところで彼女が駆け寄ってきた。犬のように。

「…もしかして、待ってた?」
「あ、はい!お礼したくて!」
「いいのに、お礼なんて」
「いやいや!あそこで松川さんが来なかったら、私一日中お店の中にいたかもしれません!」
「大げさだよ」
「本当です!」

何か奢ります、と言った彼女に、俺はクスりと笑った。見返りを求めていたわけじゃないのに、自分からいうところが、本当に彼女らしい。「近くのカフェでもいく?」と誘う俺に激しく首を上下に振った。面白い。

「何でも言ってくださいね!何でも奢ります!」
「いいって」
「え?そうなんですか?」
「苗字さん面白いから、どうせなら話したいなって思っただけ」
「えー!嬉しいです!でもやっぱり奢ります!せめて飲み物だけでも…!」
「はいはい、分かったよ」

彼女が嬉しそうにしているので、俺も嬉しくなる。まあ、俺は彼女の分も払うつもりだけど。今日、こんなところで会えたのが凄く奇跡で、偶然。さて、どうしたら彼女は俺の事、好きになってくれるかな。


20160221
狛様、リクエストありがとうございました!初松川なので、ドキドキでしたが、狛さんのリクエストにそぐわない内容でしたら、いつでも拍手かメールフォームにてお申し付けください!そしてお気遣いの言葉もありがとうございます。今のところ元気なのでこれからも更新がんばっていきたいです!それでは失礼します。

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