「もう!京谷のばーーーか!」
「っおい!」

俺にこれでもかってぐらいの大声でバカと叫ばれ、走って逃げていったのは、同じクラスの苗字名前。何でこんなことになったのかというと、俺がバレー部に戻ったことをさらりと伝えると、いつ?と聞かれ、2ヶ月ほど前というと、何でいってくれなかったの!とキレだしたのだ。彼女とはクラスの中でも仲が良いほうで、割と話していた。そのうち彼女のほうから話しかけてくるのが増えて、バレー部のことも少しだけ話していた。俺が一番仲が良いのは彼女だと思うし、彼女もそうなんだろう。だからこそ、早く伝えておけばよかったと今、後悔している。
そして今、彼女を必死に追いかけてる。

「追いかけてくんなばかー!」
「っ止まれ!」
「やーだねー!」

何をムキになっているのか、止まってくれない。走る速さはどんどん早くなって、角を曲がった。自分も負けじと頑張って走るが、角を曲がったらもう見えなくなっていた。はあ、はあ、と息をつき、そこに座り込む。あいつ、足速すぎだろ…。突然の喧嘩のような自体に、どうすればいいか分からない。謝ったらいいのだろうか。謝ったら、許してくれるのだろうか。分からなくて、頭を掻く。こんなことになったことがないから、分からない。喧嘩というのは、すぐ謝ったら解決されるものなのだろうか。悶々と考えていたら、コン、と何かが足に当たった。見ると、石ころだった。

「そこでへばるとか、ほんとにバレー部…?」

口を尖らせながら、眉間を寄せながら俺を見つめる彼女に、俺は吃驚して言葉が出なかった。彼女は俺の隣には座らず、目の前にたたずんでいる。

「…悪かった」
「……」
「練習、頑張ってる」

体育館で…。そう言うと、彼女は隣に座り込んで、バカ、ともう一度言った。もう許されているみたいだった。彼女はもう、逃げはしない。

「……あたしは、京谷の彼女でもなんでもないけど」
「…」
「でもさあ、仲良かったから、言ってくれてもよかったんじゃないかな、とか思うじゃん…」

こういうのは女子によくある心理みたいだ。もう一度謝ると、もういいよ、とふて腐れた顔で俺を見つめた。顔が微かに赤い。全力疾走していたからだろうか。

「…ぶっちゃけ、追いかけてきてくれないと思ってた」
「…」
「だから、追いかけてきてくれたとき、嬉しかったー…」

彼女は、一体何を言い出しているのだろうか。嬉しそうに語る彼女に一つの感情が生まれた。彼女はへへへ、と笑いながら髪を揺らす。これは自分の自意識過剰で生まれたものかもしれないが、聞いてみることにする。

「お前、俺の事好きなのか?」
「っはあ!?」

返ってきたのは予想以上に大きい声で吃驚して思わずのけぞってしまった。何、いきなり…と髪を撫でながら目をそらす彼女の顔は、さらに赤くなっていた。

「…好きだけど」
「…」
「…」
「…」
「何よ!何か言いなさいよ!」

そう言って俺の肩をガクガク揺らす。いや、そうだとは思っていたけど、本当にそうだとは思わないじゃないか。
とりあえず俺は、何を言おうか考えることにした。

20160306
匿名様、リクエストありがとうございました!
京谷と喧嘩する、というリクエストでしたが…喧嘩でしょうか、これ…笑 多目に見てもらえれば幸いです。素敵なリクエストありがとうございました!


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