「ん〜!オレンジジュース売り切れってどういうことだよ〜!」

自販機の前でワーワー喚くが、売り切れという文字は消えない。私が好きなジュース、ない。飲めない。のどが渇いて仕方ないというのに!ばか!ばかばか!

「ちょっとごめんね〜」
「あ!申し訳ありません!どけます!」
「あはは、元気があっていいねえ〜」

ニコニコと笑いかけてきたのは3年の及川さんだ。知ってるぞ、バレー部のキャプテン。ケンちゃんが話してた気がする!なんて話してたか…覚えてないけど。…いやその前から知ってたような。まあいいか。しかし爽やかな人だ。

「…ん?君狂犬ちゃんと一緒に帰ってた子じゃない?」
「え!」

狂犬、それは久しぶりに聞いた気がする。確か、ケンちゃんのことだ。

「そうです!多分!」
「やっぱり〜!てか多分って何」
「ケンちゃんが私以外の女子と帰っていたら別ってことです!」
「いやいや、帰らないでしょ。信じてあげなよ」
「はい!」

信じてる、信じてるよ。ていうか私は別に帰っても大丈夫だ。でもケンちゃんは私があのメガネ野郎と帰るのは凄く怒るんだよねえ。そりゃそうか。ケラケラ笑っている及川さんを横目に、どのジュースにしようか考え始めた。寒いし、そろそろ教室に戻りたい。

「そういえば、君は何を買いに来たの?」
「オレンジジュースです!」
「ああ、売り切れだね」
「そうなんですよ〜!」
「ミルクティーとかは?」
「あ、いいですね!それにします!」
「あはは、早い」

人にオススメされたらそれでいいや、と思ってしまう。お金を出して入れようとすると、「待って待って」と及川先輩に止められた。あ、先にジュース買うってことかな。及川先輩はお金を入れて、ミルクティーのボタンを押し、出てきたミルクティーを私に差し出した。…え。

「あの、あの…」
「狂犬ちゃんの彼女ってことで凄い同情したから、あげる」
「!?あ、ありがとうございます…!?」

同情!?なぜ?!なぜ同情されるんだろうか。「噛み付かれたりされてない?」そうニコニコと笑いながら聞く及川さんになるほど、と自己完結した。

「全然!やっさし〜です!ケンちゃん!」
「あはは、ベタ惚れ?」
「そうですね!ベタベタに惚れちゃってます!」
「へ〜、そうなんだ〜」

意外そうに見てくるから、ムッとしてしまうけど、私も好きになる前はひたすらケンちゃんを怖がっていたから、言い返せない。今は全然怖くないけどね!大好きだし!それから及川さんの質問タイムが始まった。二人の時はどんな感じなの、とかおごったりするの、とか、暴力ふるうの、とか。全部にペラペラと答えていると、突然肩を掴まれた。

「おせえと思ったら…」
「あ!ケンちゃん!」
「狂犬ちゃん!やっほ〜!」
「……」

無言で及川先輩を睨みつけ、私に帰るぞ、と言って手を引っ張る。足が絡まってコケそうになりながらも、及川先輩に「ありがとうございました〜!失礼します〜!」とジュースをかかげてお礼をいうと、ニコっと笑って手をふってくれた。うん、爽やかだ。くるりと方向転換して、歩き始める。ケンちゃんの顔を見ると、少し不機嫌そうだ。

「ごめんね、及川先輩と話してて」
「…」
「あ、でも、全然、あれだよ?普通の話…」
「奢られてんじゃねーか」
「!」

キッとにらみつけてきたケンちゃんに、びくりと体を震わす。わあ、久々に怒ってるなあ、迫力ありすぎる。

「これはね、ケンちゃんの彼女だから、って奢ってくれたんだよ」
「……」
「ごめんね、次は本当に断るから」
「…別に、そうじゃない」
「え?」

ぴた、と足を止めるケンちゃんに私も止まる。じろ、と私を見て、頬をつねった。痛い。

「…あんまし、仲良さそうに話すな」
「………」
「分かったら返事しろ」
「っは、はい!」

ケンちゃんは無言で頷き、私の頬を離してまた歩き始めた。私はというと、ニヤニヤが止まらない。だってだって!ケンちゃんがヤキモチやいてくれたんだもん!にへら〜と笑っているとケンちゃんと目が合い、キモいと言われた。酷い。でも、好き。

20160304
匿名様、リクエストありがとうございました!京谷君は嫉妬していたら黒いオーラを抱えて怒ってそうですよね。笑 矢巾君と絡ませようとしましたが、喧嘩になりそうだったのでやめました。笑 素敵なリクエストありがとうございました!

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