職場の先輩と、内緒で付き合っている。
少しだけ恥ずかしいのもあるし、何だかからかわれそうだからだ。先輩はそれを言ったら、納得してくれたので未だに私と先輩が付き合っていることは誰も知らない。
だからか、二人で話していてもバレることはないのだ。

「あっ名前。赤葦さんいるよ、あそこ」
「そうだね」
「おいおい、あれ隣の部署の佐藤さんじゃん。女癖悪いって言われてるけど、食べられちゃうかもだよ?いいの、名前」
「何で私に聞くの」
「仲いいじゃん。名前絶対好きでしょ?」
「う…休憩終わりー」
「あっちょ、名前!」

どうしよう、バレてないとは思っていたけど、私の気持ちはバレバレみたいだ。そうだよなあ、会うたび頬が緩んで緩んで仕方ないから、周りから見たらバレバレだよなあ。ちら、と先輩のほうを見たら、確かに佐藤さん、スキンシップが多い…。いいけど、いいけど〜!私はそういうの束縛しないし、先輩だってそういうの分かってるだろうから…。
赤葦先輩は、まだ入社一年もたっていない私によく仕事のアドバイスなどをしてくれた優しい先輩だ。私のほうが先に好きになって、アタックしまくって…そして付き合えた。猛嬉しくてたまらないのに、私が内緒にしようなんて言うのはすごくおこがましいと思うのに、赤葦先輩は笑ってオッケーしてくれたから、懐の深い人なんだなあって思う。未だに、私にはもったいない人だと思うのだ。それでも、誰かに譲るなんてことはしないけど。

「…」
「…何」
「いえ、何でも」

赤葦先輩の自宅にて、ご飯を作りに行ったけど、今日のことを思い出してやっぱりモヤモヤしてしまう。しゃべらないで、とは言えないし、そんなことを言えるわけない。

「何かあった?」
「…別に…」

ご飯を食べながら、心配そうに聞いてくる赤葦先輩に胸が締め付けられる。私のただの嫉妬なんです。そんなつまらないことで心配そうに聞かないでください。多分寝たら機嫌直ってると思うので。そう心の中でいう事を考え、赤葦先輩を見つめる。

「あの、先輩」
「ん?」
「…え〜っと、その…」
「何?」
「あのですね……やっぱりなんでもないです」

やっぱりいざいうとなったら言えなくなる。わざわざ言うことでもないし、またあとで聴かれたら言うことにしよう。ご飯をかけこみ、おかわりしますか?と聞くと、赤葦先輩は黙って茶碗を置いた。

「何かやましいことでもあったの」
「えっ」
「さっきから様子おかしいし、言うことも渋るし」
「えっえっ」
「…浮気?」
「そ、そんな!しませんよ!」

ガタりと立ち上がり、自分は潔白だと言い張る。そんなことするものか。私はずっと、先輩だけが好きなんだ。

「し、嫉妬しました」
「え?」
「だから、その、佐藤さんと喋ってたじゃないですか…それを丁度見てしまい、その…」

もごもごと上手く言えず、すとん、と座る。恥ずかしい。

「…なんだ」
「すいません、しょうもなくて」
「全然。嬉しい」
「ええっ」
「名前はそういうのしないのかな、って思ってたし」
「し、しますよ…めちゃくちゃします」
「ふうん」

嬉しそうに微笑む先輩を見たら、顔が熱くなってきた。「ほんとよかった」と言って先輩は茶碗をもって、「おかわり」と差し出した。私はご飯をよそって先輩に渡す。うん、私も食べよう。

「ねえ」
「はい」
「結婚しよっか」
「……はい?」

ば、と顔をあげると、にこりと笑う先輩。な、な、な…!

「けけけけけ結婚!?わ、私とですか!?」
「そうだけど」
「こ、こんなタイミングで!?凄く自然すぎてびっくりです!」
「色々考えてたんだけど、ご飯美味しいし、名前が可愛いことを言ってくるから、ついね」
「つい、ですか…」

カアア、と顔が赤くなる。ご飯だって食べれない。でも、凄く、凄く嬉しい…!

「わ、わたしでよければ!け、結婚…したいです…」
「うん」
「すいません、何か、泣きそうです」

そういうと、ティッシュを持ってこっち側に赤葦先輩がきてくれるから、大好きだなあって思う。もう内緒にできないね、と赤葦先輩が嬉しそうにいうから、本当は言いたかったのかなあと思いながら、はい、と頷いた。

20160305
彪様、リクエストありがとうございました!プロポーズ…赤葦はいろんなシチュエーションで想像できますね。楽しく執筆させていただきました。素敵なリクエストありがとうございました!


| 戻る |


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -