「おいこらぁ!名前どこよ」
「トイレ行った」
「名前〜〜!何で私も一緒に連れてってくれないの…」
「トイレぐらい一人で行かせてあげなよ…」
「うるさい!パツキン野郎!頭頂部黒いのよ!」
「それ悪口なの…」

名前の友達、ミヨと呼ばれる子が絡んできたので、携帯を机の中に入れて仕方なく話してやる。…といっても、未だにこの子とは上手く喋れる自信はない。怖いし、何かつっかかってくるし。…早く帰ってこないかな。

「…名前と付き合えたからっていい気になってんじゃないわよ」
「なってない」
「どうせ手繋いで帰って〜〜部活ない日はクレープ食べにいって美味しいね〜とか二人して笑ってんでしょ!?あ!?」
「…してない」

半分あってる。けどそんなこといえるはずなくてぷい、とそっぽを向いた。「ちゃんと答えろ!」と俺の肩を揺さぶる彼女にため息をつく。やめてよ、と彼女の腕を掴んだ。もう疲れたから早く帰ってきて、名前。

「はあ〜…名前がさぁ…最近あんたの話ばっかりで凄いイヤ。それを名前に言ったらすごい笑顔でどうして?って聞いてくるのが凄くイヤ〜〜!全部あんたのせい!」
「知らないよ…」

彼女が腕を離してくれてほっとした瞬間、その話をしだしたので、つい頬が緩む。といいつつも、名前が俺の話をしてくれているということを知れて大満足だ。嬉しい、俺の話をしてくれているんだ。「嬉しそうにしてんじゃないわよ〜!」と睨む彼女は今はおいといて。

「あたしから名前とって…名前といる時間もとったら許さないから!」
「……」
「ちょっと、喧嘩売らないでよ」
「名前!」

ひし、と抱きしめる彼女に名前はたじたじ。「おかえり〜」と言う彼女にただいま、と言って席についた。彼女は名前の前では犬のようだ。

「こいつが!こいつがあたしに酷いこと言ってくるの〜!」
「ちょっと、言ってない」
「ミヨちゃん」
「だ、だって名前…あたしよりこいつなんだもん…うわああん…」

泣きはじめた。凄く面倒くさい。名前は彼女の背中を優しく叩いて、落ち着いて、とあやしている。彼女は保育士が似合いそうだ。…良いお母さんにもなれなそう。……って、俺は何を考えているんだ。それからチャイムが鳴ったので、彼女は寂しそうに席に戻った。といっても、後ろだが。だが教科書などを準備していなかったので、ロッカーのほうへ歩いていった。もう授業は始まっているのに。

「…ミヨちゃんと仲良くなったの?」
「…別に」
「ふうん」

名前が面白くなさそうに俺を見る。何だ、もっと仲良くなってほしいのだろうか、俺には無理かもしれない。そう考えてみたら、「あのさぁ」と彼女が切り出した。

「あんまり、スキンシップ、ボディタッチ、ダメね」
「…え?」
「肩、掴まれてたし、その腕、握ってたし…」

彼女らしくない、ぼそぼそとした声に吃驚する。だけどそれがなんなのか、俺にはすぐ分かった。

「嫉妬?」
「!」
「俺に、名前が?」
「……ちょ、ちょっとだけだよ…」

友達にするなんて、心狭いと思うけど、ともじもじしだした彼女に、心臓がきゅっと掴まれた気分になった。
凄く、可愛い。

「大丈夫、好きなの、名前だから」
「うん、知ってるよ」
「触りたいのも、触られたいのも、名前だけ…」
「……け、研磨…」

俺も、名前も、顔が赤くなる。名前を安心させる言葉をかけたかったけど、こっちまで照れてしまった。「嬉しい」そう言う彼女の顔は赤くて、でも、笑顔だ。

「なっなんで顔赤いの!?熱!?保健室!?」
「…ミヨちゃん」

たまに思う。この子、邪魔だと思う。俺と名前が話している時に入ってこないでほしい。多分、彼女も同じ事を思っているだろう。

20160306
匿名様、リクエストありがとうございました!優しい君には〜の番外編リクエスト、どうでしたでしょうか…。ヒロインの友達をまさかまた登場させることができて嬉しいです。笑 お気に召していただけたら幸いです。素敵なリクエストありがとうございました!

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