あいつは、よく顔を赤くする。例えば、俺が弄ってやれば、顔を真っ赤にして反論するから面白い。俺の名前を呼ぶだけでも赤くするし、構ってやらなかったら顔を真っ赤にして構えと言わんばかりに後ろから抱き着いてきたりする。そんなところが、すげえ可愛い。

「い、岩泉〜〜」
「…」
「いわいずみ…」

そして今は、名前で呼ばないと返事してやらない作戦実行中だ。こいつがいつまでも俺の名前を呼んでくれねえから、少し意地悪をしてみた。袖を引っ張って俺の苗字を必死に呼ぶ名前はたまらなく可愛いけど、名前呼ぶまでは返事しねえし反応しねえ。

「本当に名前で呼ばないと反応してくれないんだ…」
「…」
「ばか〜〜」

そう言って背中に頭をぐりぐりとこすり付けてくるところが凄く可愛い。場所が場所だから良かった。非常階段とかあんまり人がいねえところだと、スキンシップが多くなるんだよな、こいつは。ボーッと前を見ていると、名前を呼ぶ気になったのか、息を整えている名前が視界の端でとらえた。名前呼ぶぐらいで何でそこまでしなきゃなんねーんだ、って笑えて来た。

「は、はじめ…さん」
「何だよはじめさんって」
「や、やっと返事した〜〜!」

ぎゅうぎゅうと俺の腕を抱きしめる名前にため息をつく。こいつにとって俺が返事をしないことは泣くほどいやだったらしい。涙目になっている。

「名前で呼ぶ特訓な、これ」
「厳しすぎる…」
「何でよべねーんだよ」
「恥ずかしいのよ、仕方ないでしょ」
「偉そうに言うな」
「いたっ」

ぺしっとおでこを叩いてやると、痛そうにおでこを手でおさえながら俺を睨みつける。全然こわくねえけど。

「何でいわ…はじめは、あたしの名前そんな簡単に呼べるの」
「呼びたかったからだ」
「っそ、そう…」
「聞いたくせに照れんなよ」

ぽぽぽと顔を赤くして顔を俯かせる彼女がたまらなく可愛い。彼女というものは、こんなに可愛いものだったんだな。今度及川にネチネチと語ってやろう。最近あいつの惚気くそうざかったから今度は俺の番だ。

「あたしだって、呼びたいんだよ、本当は」
「…」
「でもっは、恥ずかしいの!分かって!」
「分かってはやるが譲らねぇぞ、俺も」
「うう…」

それでも俺だって、お前に名前を呼ばれたいんだよ。分かってるとは思うけど、こいつには難しいみたいで、ため息をついた。ほら、こいつは俺のため息一つで全身を震わせてどうしようって顔でキョロキョロと周りを見渡す。誰もいねーっつーの。

「今、俺と二人きりなんだから俺だけ見てろ」
「いっ…ひゃい」

両頬をびよんと両手で伸ばし、顔を近づけてそう言うと、顔を真っ赤にしながらも、コクコクと頷く彼女に俺は笑った。こいつ、ずーっと顔赤いまんまじゃねーか。手を離して、鼻にキスすると「わぁあ!?」と変な声を出された。色気ねえ。

「なっななななな、い、岩泉さん…」
「おい苗字」
「は、鼻って!鼻って!犬か!」
「お前のほうが犬みたいだぞ」
「うるさいばか!もー!」

ぽこぽこと俺の胸を叩く彼女に俺はため息をつき、そのまま抱きしめてやると、ピシ、と固まって動かなくなった。こういうところ、可愛いと思うし、面白い。心臓の脈拍が早いのを感じて、ククッと笑みがこぼれた。

「は、はじめって、あたしで遊んでるでしょ」
「はは」
「わ、笑ってごまかさないでよね!」

そう言って、ぎゅ、と俺の背中まで手をもっていき強く抱きしめる彼女が、たまらなく好きだ。言わねーけど。

20160306
あんこ様、リクエストありがとうございました!その彼女、番外編で岩泉視点ということで…滅多にない、岩泉視点をかいてみました。基本この二人はイチャイチャしてるバカップルなので考えてることも可愛いとかばっかりだと思います。笑
素敵なリクエストありがとうございました!

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