「ぬわああっうわあああっ」
「落ち着いて、とりあえず拾って」

ノートを運んでいたら何もないところでつまずいてすっ転んでしまった。わあわあ悲鳴をあげる私に赤葦君はため息をつきながら拾ってくれる。

「ごめんねえ、赤葦君…」
「別に、大丈夫」

赤葦君は凄く頼りになる私の彼氏だ。花瓶を持ってコケそうになった時も慌てて受け止めてくれたり、実験の時もフラスコがボコボコいって溢れていたら慌てて火を消してくれるし、風でスカートの中が見えそうになったら見えてるよ、といってくれるし!

「赤葦君、そんなに持たなくていいよ、はんぶんこだよ!」
「いや、危なっかしい」
「大丈夫!もうコケない!」
「信じられない」
「…」

きつい言葉をかけられしょぼんとなりながらも、渡された少しのノートを持って赤葦君の隣を歩く。途端に歩くのがゆっくりになってくれて、ほんの気遣いでさえも嬉しく思う。

「赤葦君は、優しいよね」
「何、急に」
「それで、凄く良い人だ!私にはもったいないくらい」

へへへ、と笑いながらそう言うと、赤葦君は呆れたように笑いながら「何言ってんの」と呟いた。だって、本当にもったいないくらいなんだもん。告白してきたのも赤葦君だったし、何しても助けてくれるのは赤葦君だし。

「名前は俺がいないと危険だからね」
「ちょ、それどういう意味!」
「俺なしでは生きていけないんだよ」
「え、そ、そんなに…!?」
「というか、俺がそんな感じにさせたい」

赤葦君はにやりと笑って私を見つめる。背筋がぞっとするのを感じながら、「何それー」と笑う。赤葦君もすぐにふにゃりと笑って「なんてね」、と。

「まあ、それぐらい名前が好きってこと」
「ええ!照れるなー!」
「名前は?」
「もちろん!大好き!」
「やっぱり」
「へへへー」

バカみたいな顔して笑う私のこと、凄く好きっていってくれる赤葦君が大好き。未だに名前で呼ばない私にたまにしょんぼりすることもあるけど、自然に名前を呼んでくれるまで待つといってくれた。

「ほら、階段、気をつけて」
「はい!隊長!」
「隊長って、なに」

私は、赤葦君が好きだから、たまに見せるほんのちょっとのブラックなところも受け入れたいと思う。前に友達にそのことを言ったら、あんたが好きすぎておかしくなったんじゃない?と言われたのでへへへと笑っておいた。ほんとは凄く嬉しかったりする。だけど、おかしくなってほしくないなあとはいつも思うんだ。

「赤葦君、おかしくならないでね!」
「ならないよ」
「それならよかった!」
「名前こそ、コケないでよね」
「はーい!」

こうして今日も一日が過ぎていく。私はそんな毎日が、大好きなんだ。


20160228
匿名様、リクエストありがとうございました!溺愛する赤葦を考えてみたのですが、どんな感じなんだろう…少し重たい感じかなあ…?という結論に達しました。笑 危なっかしいヒロインも上手く書けたか不安ですが、気に入っていただけたらなあと思います。
素敵なリクエストありがとうございました!

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