「わっかっく〜ん!」
「……」

今日もうるさい女がやってきた。こいつの名前は苗字名前というのだが、見た目がとにかく派手でチャラチャラしている、大和撫子とは程遠い存在だ。

「やっほ!元気〜?風邪だった名前ちゃんも全快しましたよ〜!」
「バカは風邪を引かない、というが…」
「バカじゃなかったってことだよねん!」

ケラケラと笑いながら俺の隣の席を笑う彼女。こいつはなれなれしいし、しゃべり方が好きじゃない。もっと普通に喋ってほしい。

「ね、ね、寂しかった?寂しかったぁ〜?」
「寂しくなかったな」
「もう!嘘つき!ほんとは寂しかったくせにぃ〜!」

ばしばしと俺の背中を叩いてにまにま笑う。何なんだ、全く。俺が否定をしても、そのように捉えてくれないなら俺が何を言っても変わらないじゃないか。

「私、ちょっと変わったくない?」
「バカさ加減に拍車がかかったのか」
「もう!違うってば〜!分け目かえたの!前髪の!」
「…」

目を凝らしてみてみるが、何が変わっているのかよく分からない。女子はよく前髪がどうのこうのと話しているが、そこが変わったからといって顔のつくりが変わるわけじゃないから、俺には同じにしか見えん。反応の薄い俺にブーブー文句をたれる彼女にため息をついた。

「若君はどっちがいい?こっち側と〜こっち側の分け目!」
「どっちも変わらん」
「ええ!そんなことないでしょ!」
「……右側のほうがいいんじゃないのか」

適当に答えると、え、そうなんだ〜!と言ってニパニパ笑って携帯を弄り始めた。「若君の好みの分け目は、と」と言っていたのできっとメモしているんだろう。バカバカしい、適当に言った言葉を信じるとは、やっぱりこいつはバカだな。

「じゃあ明日からこっち側でこよ〜ふふふ、ふふふふ…」
「気味が悪いぞ」
「もう!そんなこと言わないでよ〜!」
「思ったことを言ったまでだ」
「冷たい!酷い!厳しい!」
「なんとでもいえ」
「む〜…」

つん、としていたらいつか飽きて俺のほうには来なくなる、とは思っていたが、彼女は案外しぶといみたいだ。彼女は頬杖ついて俺を見つめる。本物なのか偽者なのかよく分からない瞳で、俺を見るんだ。

「どうしたら私のこと、好きになってくれるのお?」
「…お前を好きになることなどない」
「あるよ!」
「なぜそう言いきれる」
「わかんないけど!あるもん!」

ただヤケクソになっているようにしか見えないが。睨みつける彼女に澄ました表情で見ていたら、急にカッと顔を赤らめた。

「そ、そんなに見つめられると…て、照れるなあ〜…」
「……」

驚いた。こいつでも、こんな風に顔を赤らめて、照れることなんてあるんだな。いつもイライラしている仕返しにとばかりに、俺は目をそらすことはなかった。顔の前に両手で壁を作り、「見ないで〜!」と言う彼女にイラっときたので、その両手を片手で掴む。びくりと体を震わせた彼女は顔をこちらに向けた。凄く、赤い。

「…」
「…」
「…ち、ち、ちかい〜!」
「!」

顔をぶんぶんと振り、離せ〜!という彼女を見たら我に帰った。ぱ、と手を離し、何をしていたのか思い出す。これじゃあまるで、俺が迫っているようじゃないか。

「若君てば、大胆。やっぱり私のこと好きなんじゃない?」
「そんなこと、あるわけないだろう」

そうは思っていても、心臓の脈拍が物凄く早い。あんなにも至近距離で彼女を見たのは初めてだったから。彼女の瞳は、偽者ではなく本物だった。凄く、キラキラと輝いていたのだ。
俺は、彼女に何か違う感情を持ち始めたことに気づかないフリをした。


20160304
あさ様、リクエストありがとうございました!まさかこんなリクエストがくるとは思わなかったので、とても嬉しかったです!牛島君と彼女、読んでいただけて幸せです。やっと牛若に気持ちが芽生えたところで終わりですが、続きは想像にお任せします笑
素敵なリクエストありがとうございました!

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