「あー!名前来たー!」
「久しぶりヨーコちゃん…あ、ミカちゃんもいる」
「名前こっちこっちー」

高校の同級生で飲み会が開かれるという事で、いつもは仕事を理由に断っていたけど、今日は来て見た。いろいろあるけど、今日は仕事が早く終わったからなのもある。それに、たまには高校の友達と飲みたい。

「名前可愛くなったー?」
「メイクしてるから」
「これはあんたに惚れる人もいるんじゃない?」
「ないよ、もう」

友達があげてくれるのは嬉しいけどお世辞なんじゃないかと思いながらお酒を頼む。周りを見れば結構な人数が来ていて吃驚した。…そこには、及川徹もいた。女子に囲まれて談笑しているのを見れば、変わらないなあとため息をついてしまった。

「何々?どした?」
「ん?あ、いや、あれ…」
「ああ、及川君?あれは元カノとしては複雑よねー」
「もう、めちゃくちゃ前の話だよ、それ」

そうだ。私と及川徹は高校時代付き合っていた。進学先が違ったため自然消滅してしまったのだ。だから私はあいつのことは嫌いなわけじゃない。寧ろ、まだ好きという気持ちが残ってしまっている。これはあいつには邪魔な感情かもしれないけど。注文したお酒が来たので、それをちびちび飲んでいたら、「おっ苗字!」とかつて同じクラスだった男子が私を呼んだ。それで近くにいた男子が一斉に私を見る。もちろん、及川徹も。

「今日は来たんだな〜久しぶり!」
「うん、久しぶり。かわんないね、そういうとこ」
「いや、どういうとこ?」

ははは、と笑いながらお酒を飲む。視界の端にいる及川徹が、コッチを見ているようで、見ていないようにみえる。自意識過剰か、と気にしないでこの男子と話すことにした。それにしても、こんなにぐいぐいこられると思わなかった。正直、困っている。

「いや〜苗字、可愛くなったなあ…」
「ははは、ははは…」
「あ、ライン教えてよ。またどっかで会ったりしようぜ」
「あははは…」

もしかして狙われてる?いやいやまさか。片手に携帯を持ってじりじりと寄って来るかつてのクラスメイトに恐れを抱いた。…まさか。

「ちょっと〜ガツガツ行くの禁止だよ〜。ていうかあっちの女子が呼んでたけど?」
「うおっまじ!?」

その男子は颯爽と戻っていた。良かった、助かった。…及川徹に、助けられた。

「久しぶり、元気してた?」
「うん。そっちこそ」
「俺はげ〜んき。超元気!」
「うん、そう見える」

私の隣に座ったので、ドキドキしながらお酒を飲む。彼氏だった、及川徹が、隣にいる。それだけで酔いがまわったようにクラクラしてきた。

「…ねえ、俺さあ、今日は名前が来る!って賭けて今日来たんだよね」
「そうなの?何でまた」
「んー…会いたかったから?」

疑問系の返しにどう答えようかと思いながら、今言ったことを頭の中で反芻する。…会いたかった、から?

「え、ど、どう、な、なぜ」
「あはは、どもってる〜」
「何で!」
「何でって、んー…」

考えだしたこいつに、もう私は倒れそう。適当?適当に言ってるの?それならかなり私は翻弄されている。だってまだ私は、貴方に気持ちが残っているから。にこっと作られた爽やかなスマイルで、「かえろ!」と言い出したこいつに、目が点になる。ま、まだお酒ちょっとしか飲んでない…!そう思いながら自分の分のお金を出してされるがままにお店を出た。友達にどうしたの?と聞かれたけど答えることができなかったので、あとでラインすることにする。
店に出て、鼻歌を歌いながら歩き出すこいつに、「ちょっと!」と詰め寄る。少しだけ、顔が赤かった。

「どういうつもり…」
「どういうつもりって、そりゃあ、…送り狼?」
「なっ」
「今日名前と久々にあって確信した。やっぱまだ好きだわ〜」

そう軽く言ってのける及川徹の神経が分からない。吃驚して何も言えないでいると、頭を撫でられ、私の名前を呼ぶ。

「ね、もっかいやり直そうよ」

そういう横暴なところも、強引なところも、全部包み込めるぐらいにがんばってきた高校生活。私の青春全部あんたに捧げた青春を思い出して、何だか涙が出てきそうになった。これからも、こいつと一緒なのか。

「…いいよ…」

好きだから、惚れた弱みだから、いっぱい理由はあるけど、「やった!」と素で喜ぶ彼と見たら、心臓がきゅうと締め付けられたから、一番の理由はこれなんだということが分かった。

20160306
アズサ様、リクエストありがとうございました!及川は強引なイメージです。笑 彼女にはベタベタに甘やかしてそうですね…。笑
素敵なリクエストありがとうございました!

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