…ずっと、好きだったんだ。

「おはよう山口君」
「おっ、おはよう、苗字さん…」

ドキドキしながら挨拶を返すが、彼女はニコニコと笑って、一つもドキドキしていなさそうだった。彼女は以前、彼氏がいたのだが、とある理由がフラれてしまった。それを慰めていて、ノリで告白してしまったら、オッケーされてしまったのだ。俺は、ずっとずっと好きだったから凄く嬉しかったけど、たまに無理してるんじゃないか、と思ってしまう。

「あ、ツッキーがトイレから帰ってきた!」
「え?」
「ほら、あそこ!」
「あ、本当だ。あはは、よく見てるね〜」

彼女は俺の事なんて最近まで興味が全くなかったんだ、ツッキーのことを話してもしょうがないとは思っていたけど、ちゃんと聞いてくれるから嬉しかった。ツッキーの話ができるって、凄く嬉しいから。

「ふふふ」
「?」
「山口君、月島君のこと凄く好きなんだねえ。嫉妬しちゃう」
「え、え!?え、え…」
「あはは、動揺しすぎ」

だって、まさか彼女がそんなことを言うなんて。今まで以上に心臓がバクバクといって、今にも死にそうだ。だって彼女が、嫉妬だなんて、俺に、嫉妬だなんて…。嬉しいけど、やっぱり無理してるんじゃないか、と勘繰ってしまう。好きだからこそ、無理してほしくないんだ。

「私が例えばーうーん…あ、影山君のこと話してたら、モヤモヤしちゃう?」
「えっする!めちゃくちゃする!」
「そっかー、そっかそっか」

嬉しそうに微笑む彼女を見たら、きゅう、と心臓を鷲掴みされた気分になる。そんなに微笑まないでよ、俺の事好きなのかな、って思ってしまうじゃないか。もやもやした気持ちが邪魔して、素直に彼女のことを信じられない。

「…名前で、呼んでもいい?」
「えっえ、え!?」
「だって、いつまでも山口君って、他人行儀じゃない」
「お、おおお、お願い、します…!」
「じゃー、忠君?」
「!」

どうしよう、凄くキラキラして聞こえる。こんなにも、俺の名前って素敵だったっけか。言い表せない気持ちに収集つかないでいると、あはは、と声をあげて笑った。

「名前で動揺しすぎだよー、忠君?」
「っう、ああ…」
「可愛いなあ、もう」

にまにまと笑う彼女を見たら、ドキドキが止まらない。

「…苗字さん」
「あ、私のこと名前で、」
「苗字さんって、俺の事好きなの…?」

こんなタイミングで、とか今更?とか思うかもしれない。でも聞かないではいられなかった。彼女が、俺と彼女の関係を変えようとしてくれているから、どう思っているのか聞きたい。

「あったりまえじゃん!ばかだなあ、忠君って」
「……」
「もしかして無理してると思った?」
「っえっと、いや」
「やっぱり。も〜、元彼のことなんてとっくに忘れたよ〜。今は忠君に夢中〜」

首をかしげてニコニコと笑う彼女に、熱が急上昇してきた。どうしよう、凄く可愛い。

「忠君は?忠君は?」
「えっお、俺?」
「そうだよ!私に言わせといて、忠君は言わないの〜?」

小悪魔のような微笑で、頬杖をついて俺を見てくる彼女を見たら、ムクムクと気持ちが浮き上がってくる。そりゃあ、そりゃあ…!

「好きに決まってる!」

立ち上がって、そう言うと、思ったより皆から視線をもらってしまい、爆発するんじゃないかというぐらい顔を赤くして、ストンと席に座った。彼女はクスクス笑い、バカだなあ、と凄く嬉しそうに呟いた。俺はもう、不安にはならなかった。

20160304
匿名様、リクエストありがとうございました!山口君は初めて書いたのですが、喋っていることの大半は月島のイメージしかないので…こんな仕上がりに笑 山口君は決めるところは決めてくれそうですね、あとで恥ずかしくなるっていうお決まりのパターンがよく似合うと思います。笑 素敵なリクエストありがとうございました!


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