「に、西谷君…!」
「!お、俺急用を思い出したぞ!」
「ああ…」

ぴゅーっと走って行く西谷君の後ろ姿を見てため息をつく。あれから避けられてる。避けられまくりだ。もうこれフラれたってことでいいんじゃないのか。涙目になりながら席につく。
西谷君はものすごく声がおおきい元気な人。そんな西谷君に一回告白したけど気づいてもらえず。もう一度告白したら、今の状況に。

「…一週間はたってるよ〜…」

これは一ヶ月は待たされるパターンなのか、はたまた、なかったことにするのか…。

「もう見込みはないってこと…?」

ぱたん、と顔を机に伏せる。思えば長かった片思い期間、告白してからが凄く早い気がした。なんで私、告白したんだろう。こうなること、考えなかったのか、ばか。西谷君に避けられてこんなに憔悴してるのに、もし嫌いなんて言われたらどうしよう。私は生きていけないかも。

「……苗字!」
「!はい…」

顔をあげると、そこには西谷君が立っていた。走ってきたのか、顔が赤い。一体どうしたんだろう。

「苗字、あの、今まで逃げてすまん!今龍に相談してきた!」
「う、うん」
「お前の思った気持ちを、ぶつけてこといと言われた!」
「うん」
「…すー、…はあ…」

え、深呼吸をしている。もしかして西谷君も、大きな声で返事をするのだろうか。ドキドキとしながら身構えていたら、ぱ、と私の手を両手で掴まれた。

「俺は、お前のことを良く知っているわけじゃない」
「…」
「でも、お前の告白に俺の気持ちは物凄く揺れまくった!船酔いをする直前の時みたいに!」
「う、うん」

そこらへんはよくわかんないし、西谷君って船酔いするの?

「今、俺ははっきりいって、お前のことスキとは言えない!だが、だが、お前の気持ちに応えたいんだ!」
「……」
「だから、よろしくお願いします!」

そうはっきりと言った西谷君に、カアーと顔が赤くなった。こんなに真っ直ぐで、真摯に返事をしてくれる人はそうそういない。自分の気持ちを包み隠さず言える、こんな人に告白してよかったと思う。

「…う、嬉しいです…」
「そうか!」
「よろしくお願いします…」
「こちらこそ!」

絶対、好きにさせてみせる。私ならきっとできる。だってこの前、大きな声で告白できたんだから、次だってやってみせるよ。西谷君のこととなると、なんでかしらないけど何でもできるような気がしてくるんだ。西谷君がこんな風に一生懸命だから、なのかな。

「じゃあ、早速今日、一緒に帰りませんか…」
「え!」

ぼそぼそ、と呟くと、西谷君はわたわたしながら、「お、おう、でも、部活が」と焦っているので、つい噴出してしまった。知ってるよ、部活ってこと。

「待ってるよ」
「!」
「終わるまで、待ってる」

にこ、と笑いかけると、西谷君の顔は一気に赤くなって、湯気がでているみたいだ。「お、おう」と何度も頭を上下にふる西谷君を見たら、帰るのがとても楽しみになった。

「…とりあえず、手離してくれてもいいかな」
「お!あ!すまん!」

今、物凄く西谷君に対しての好きが増えた、気がする。

20160304
匿名様、斗羽様、リクエストありがとうございました!短編のビッグボイスの続編のリクエストをされるとは思っていなかったので、とても嬉かったです笑 付き合ってから暫くヤキモキするけど、幸せになりそうな二人だと思います。素敵なリクエストありがとうございました!




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