あたしだって、いつもそう怒っているわけじゃないのだ。自分が悪いと思ったら謝るし、すぐ謝ってくれたら怒ったりしない。だけど、花巻。あいつは駄目だ。あたしをからかって遊んでいる具合が凄く腹立つ。

「花田ー、お前ノート間違えたスペル書いてたから書き直しといたぞー」
「あ、あんがと」
「ほらよ」
「気がきくじゃん花巻ー…てゴラァ!何つーもん書いてんだ!」

ブヒャヒャヒャ、と笑い出す花巻。あたしが怒っている理由は一つ。ノートを見ると空白の部分に不細工な豚を書いてそれに矢印を引いてあたしの名前を書いているのだ。しかも語尾に「ブヒ」だなんて書いて。バカにしてんのか、コイツは。急いで消しゴムで消そうとするが、よく見たらこれは、ボールペン。

「ちょっと!提出するときにこれ見られるじゃないのよ!」
「それはごめんだブヒー」
「ふざけんじゃないわよ!」

あたしは花巻の机においてあったノートをとって、マジックペンで超垂れ目の花巻を描いてやった。何してんだよ!と怒る花巻を無視して、「俺、花巻です。」と下に書いた。上出来〜なんて語尾に音符がつくかのような言い方に花巻は「俺のノート…!」とそれを見て盛大なため息をついた。先に仕掛けたのはそっちだ、バカ。

「もう、うっさいよ沙紀。何してんの?」
「花巻があたしのノートにラクガキしたの!しかもボールペンで!だからあたしも花巻のノートにマジックペンでラクガキした!」
「何してんのよ…」

そう言いながらもニヤニヤしてる友人。隠せてないから、隠せてないからね!?花巻はというとくそ花田、とぶつぶつ言ってて、あたしはもう知らん振り。どうせこれ呼ばれて一緒に怒られるんだろうけど、その時はそのときだ。だって最初にしてきたの花巻だし。別にいいよ、花巻と一緒に怒られるぐらい。ちょっとでも一緒にいれるし、なんてことは絶対に誰にも言わない。例え気持ちがバレていようと、こんな気持ち悪い部分誰にも見せたくないのだ。

「もう花巻にはノート貸さない」
「とか言って貸してくれるところ素直じゃねーよなあ」
「うっさい黙れ」
「あー、いいのか〜?俺が他の人に借りても」
「あんたにノートを貸したいって人はこのクラスに誰もいないわよ」
「言ってくれるなあ沙紀ちゃん?」
「いった、いったい!」

二の腕をぎゅーっと握られ、痛い痛いとぶんぶん振るあたしに、「余分な脂肪を落とそうと頑張ってんなー」と笑われた。ぴき、と青筋がたったあたしは「いい加減離せ!」と花巻の腕を掴んだ、ら。

「…」
「……花巻?」

急に動きが止まった花巻に、あたしは吃驚した。そしてゆっくりと手を離すから、あたしも慌てて手を離した。いやいや、あんた一体何がしたいんだよ。ていうか二の腕じんじんするし。でもこんなのあたし以外にしないの知ってるし、あたしのことそういう風に見てないのも知ってるから、感情が複雑に絡まってそれで、とりあえず花巻のせいにしてしまうのだ。


20151118




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