誰もいない教室に、二人。
それから無言で帰ってきたあたし達。きっと花巻はびっくりしてるんだろうなあ。あたしのこと女として見てなかったんだろうな。ばーか、あたしにちょっかい出すからこうなるんだ。本気で惚れられると思わなかっただろうね。

「さっきの話、さ」
「うん?」
「別に付き合ってほしいとかじゃないから」
「…」
「それだけ」

それからあたしは一人で授業を受けに行った。花巻はあたしの後に入ってきて、なにしてたんだよって怒られてた。あたしもだけど。泣いたあとはなくなってたみたいで、友達にいろいろ聞かれたけど、めんどくさかったの一点張りにした。それより、あたしはこれからのことが気になる。もう、あんな風には話せないのかな。授業が終わり、帰ろうとすると先生に呼ばれた。

「授業の前半でした小テスト、放課後やるからこの教室こい」

それは花巻にも伝えられていた。ああ、なんだ。あたしと花巻二人、か…。教室に戻ると、何言われてたの?と聞かれ、小テストのことを言ったら、近くの男子に聞かれていたらしく、「こいつら2人揃って放課後小テスト受けに行くんだってよ〜!」と大声で話した。

「ちょっ、声でか!」
「仲良いなあ、お二人は」
「いやこれ仲良いとかそういう問題じゃないから」
「またまたあ」

うっ…うっざ!こいつうっざ!花巻並みにうざいかもしれない。今の状況でそれを言われるのは、非常に気まずい。やめてくれ〜とおもっていたら。

「そうだぞ、こいつと仲良いとかやめろよ。俺が仲良くしてやってんだぞ」
「っあんたは黙ってろ花巻!」

嘘、花巻、あんた普通に話しかけてきたんじゃない。
いや、待って、嬉しくて声が裏返りそう。

「小テストだってお前と受けたくねーんだが、仕方ないよなあ」
「何言ってんのよ!あたしだって受けたくないから!」
「落ち着けよブタちゃん」
「んだとこら…!」

鼻息荒いぞ、とドヤ顔で言われてカチンときた。こいつ…!一回しばいてやろうか。「てましたクラス名物」と後ろで囃し立てる奴ら。もうだから、本当にやめてほしい。

「付き合えばいいのにな〜」
「だよな、そしたらからかうネタも増える」
「っ、や、やめてよ!」

あたしは花巻から離れて、囃し立てている人達のほうへと歩いた。ばか、んなことあたしと花巻が聞こえるぐらいの声の大きさで喋んな。こっちは、いろいろ大変なんだぞ…!

「花巻は、あたしのことなんてこれっぽっちも好きじゃないんだから!」

だから、あたしと松川が付き合ってる、とか変なこと言うし、あたしに遠慮がないんだよ。

「勘違いしないでよね!」

あたしは、いつだって勘違いしないように大変なんだ。

「花巻は…」
「好きだけど」

後ろで、聞こえた声。それは一瞬幻聴かと耳を疑った。

「俺、花田のこと好きだけど」

嘘だ、そんなの。
あたしをまたからかって、遊んでるんだ。だから口からでまかせ言えるんだ。じゃないとそんな淡々に、あたしが好きだって言えるわけない。

「花巻…まじ?」
「やっぱそうだと俺は思ってたよ〜」
「お前ら黙ってろ」

表情一つ変えない花巻に、男子はびくりと震え、黙った。あたりがしん、と静まる。一体どういうこと?あたし、どうしたらいいの?花巻を見つめると、花巻もあたしを見つめて、視線に耐えきれず、ドアを勢いよくあけ、走って出て行った。

20151230



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