好きな人に、あいつのことが好きとか言ってほしくない。
松川はただの友達だってのに、そんなこと言われたらさあ、なんかさあ…。

「ぐすっ、涙とまんない!」

思い出したら泣けてきた。もういいや、トイレに出てきただけだったけど昼からの授業サボっちゃおう。だって涙とまんないもん。非常階段のところに体操座りでぐすぐすと泣く。ああ、このぐらいで泣くなんて、めんどくさい女。でも今回のことでよくわかった。花巻はあたしのことなんてなんとも思っていなかったんだ。よかった、告白とかしなくて。もうこのまま話せなくなったりして…あはは、笑えない。今回ばかりはこの性格を呪った。何、暴言ばっかり、可愛くない。涙はほろりほろりと落ちる。…花巻に。

「花巻に…会いたい…」

花巻にごめんねって、謝りたい…。
それで、嘘だよって、言いたい。

「…俺がなんだよ」

目をごしごしとこすりながら、ずずっと鼻水をすする。どうしよう、花巻に会いたすぎて幻聴が聴こえてきた。あたし相当重症だな、とため息をつくと、「無視すんな」とまた。はは、まさか…まさか!?

「なっ、なんで…」

振り返ると、そこには花巻が立っていた。

「…お前を探しに来たんだろ」

だってあたし、酷いこと言ったのに、花巻。あたし一人が暴走して、あんたに…。なのに来てくれたの、花巻。

「…ばかなの」
「うっせーな」
「授業は」
「移動教室だしだりいからサボった。つーかお前もだろ」

こんな時でさえ素直になれないのに、花巻はあたしの隣に座ってくれた。嬉しい、でもそんなこと言えるわけない。

「…悪かったよ」
「…え?」
「ああいうこと言われるの嫌いなんだろ、お前」

松川から聞いた、と花巻はそう呟いた。松川、なに花巻に言ってんの。花巻はわざわざあたしに謝りきたの?ぽりぽりと頬を掻く花巻をみたら、唇が震えた。

「ばっ、ばかじゃないの」
「あ?」
「謝るのは、普通あたしでしょ…」
「…」
「あんたは別に悪くないじゃない、あたしが勝手にキレて、あんたに暴言はいたんじゃない」

するり、するりと言葉は落ちていく。だっておかしいんだもん。なんで花巻が謝るの?涙は堰を切ったように溢れて止まらなくて、もうぐしゃぐしゃ。こんな顔、花巻に見せらんない。

「…お前いっつも泣いてんのか?」
「…泣いてない」
「じゃあ何で泣いたんだよ」
「…悲しかったからよ」

花巻に、ああいうこと言われて、脈なしだって言われたみたいで悲しかったんだよ。言わせんなばか。あたしは、あんたが好きなんだから。


20151229






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