やってきたのは町民体育館。あ、ここでママちゃんバレーに参加したことある。
京谷君は大人の男の人に何か話していて、私を指差した。わ、わ、なんだなんだ?わ、今京谷君睨んだ…!え?男の人こっちくる…。

「ええっと、バレーの練習したいんだよね?」
「あっは、はい…あ、あのでも、他の人も使ってるみたいですし、あの、」
「いいよ、30分ぐらいだったら」
「えっ、あ、ありがとうございます…!」

まさか、こんな優しい人だとは。私に30分の猶予もくれた…!きゃあきゃあと一人飛び跳ねていたら首根っこを掴まれた。ぐぐぐ、とゆっくりと振りかえると、そこには狂犬が。

「さっさと準備しろ」
「はっはい!」

ショルダーバッグから長ジャージを出して急いで履く。あ、見られても大丈夫なようにしたにスパッツ履いてるよ。しかし、こんなことになると思わなかったから体育館シューズとか持ってないよ…。京谷君はそれを察していたのか、ぼろぼろのシューズを私の前に投げた。「使え」なんていわれて、急いで履く。うお、足でっか!ま、まあ私にはそんなことを言える権利はない…紐をきつめにしばって京谷君の後を追った。


「違う、だから、包むみたいにすんだよ」
「こ、こうですか…!?」
「ちげえ、手が離れすぎてる」
「こう…?」
「そうだ」

まさかオーバーハンドパスから教わることになるとは…。体育の先生より怖い。ヒイヒイ言いながら練習してたら、去年よりも上手くできた気がする。

「次アンダー」
「あ、それは得意だよ!」

京谷君が投げてくれたボールをアンダーで返す。「…まあ、オーバーよりマシ」とぽつり。やった!京谷君に褒められたぞ!うふふなんて笑ってたら剛速球が来たので急いで避けたら「次行くぞ」って怒られた。やっぱり、やっぱり怖いよ京谷君…!

「あの高校生が女子連れてきたぞ…」

ヒソヒソと話しているんだろうけど、後ろの皆さん、聞こえてます。

「彼女か…?」
「!」

私はアンダーで返すとすぐに後ろを振り向き、「付き合ってないです!」と叫んだ。みんなぱちくりと目を見開いて、はっとすると辺りがシーンと静まっていた。…あ、あ…。

「きょ、京谷君、来い!」

ボールを投げてもらうように言うと、ぽかんとしていた京谷君も投げてくれた。あ、よかった。変な風には思われてないみたい。


「ありがとうね、今日は…」
「…週一くらいなら、許してくれると思う」
「いやもう練習見てもらえるだけで十分!京谷君が教えてくれるって言った時はほんと嬉しかったし!」

ニッと笑うと、京谷君はきょとん、と吃驚したような顔をして。あれ、私おかしなこと言ったかなって不安になった。

「…気をつけて帰れよ」
「あ、うん!」

京谷君のこういうところ、優しいと思う!シューズも貸してくれたし、練習付き合ってくれたし、また付き合ってくれるような雰囲気だし。でも、手を振ってもふりかえしてはくれなかった。まだまだか、道のりは長いな…!帰り道、うふふと口元がにやけた。

「がんばるぞー!」

夕日に向かって叫ぶ私、今すごい青春してる。


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