拝啓、お母さん。狂犬というあだ名の男の子に懐かれました。

「お前歩くのおせえ」
「はっ、申し訳ございません!」

ささっと京谷君の隣に行く満足したのかふんと鼻をならして前を向いた。こ、怖いよう京谷くん。

「つーか、場所どこ」
「視聴覚だよ…こっちまっすぐ行って階段降りたら早い」
「じゃあ行くぞ」
「はい」

なんか私、家来みたいじゃない?確かに隣で歩いてはいるけれど。みんなからの視線ちょっとやばいしなんかドキドキしてきた。いやべつに京谷君が好きとかじゃなくて、みんなからこの光景をどう見ているのか気になる。
だって、移動教室を一緒に行くって私達そんな仲良くないじゃない。

「ね、ねえ京谷君」
「…なんだよ」
「(怖い)少し歩くの早いかなー…なんて…あは、な、なんでもございません!」

私の歩幅と京谷君の歩幅違いすぎて疲れた!今結構ハアハア言ってるからね!ちらりと京谷君を見るとむすっとした表情を見せながら少し歩くのを遅めた。…や、優しい!やっぱり京谷君はちょこっとだけ優しいんだ!

「…何ニヤニヤしてんだ」
「ええっ私してた!?」

きっと京谷君が歩く速度を遅めてくれたからだと思うけど。私を蔑むような目で見て来られても困るよ!ていうか怖い…。会話がなくなり、なんとなく気まずくなってきた。京谷君黙ってたら怖いし、笑わないし、喋っても怖いし。とにかく怖い…。なのに私は隣で歩いてる。考えてみたらすごいことじゃない?これは益々仲良くなれるチャンス…!

「きょ、京谷君はバレー部なんだよねっ」
「あ?」
「えっ、ち、違うのっ…?」

何か逆に凄まれたんだけど。京谷君はそのあとそうだって言ってくれたけど。そんなに気にいらなかったのかな。

「うちの学校バレー強いらしいね!私も今度応援に行く、よ…」

何か、なんかバレー部の話したら京谷君の顔が益々怖く見えてきたんだけど。きゅっと心臓を握られた感覚になって、笑ってごまかした。どうやら京谷君にバレーの話はタブーみたい。

「…お前は」
「はいっ?」
「お前は何部なんだ」

え、京谷君が私には興味を持った…!?びっくりした目で京谷君を見るとなんだよって睨まれた。怖い。

「私は生物部だよ!」
「……そんなのあったのか」
「ち、知名度がない…!?あんな素敵な部活なのに!」

キラキラと目を輝かせながら京谷君を見る。ふふふ、私の生物部魂がうなるぜ!

「あのね、今私ねずみとか飼育してんどけどね!これがも〜〜可愛いの!真っ白でね、あ、アルビノって言うんだけど…」
「うるせえ」
「はい」

駄目だ、生物部の話になると暴走してしまいそうになる。京谷君は冷めた目で私を一瞥してふいっとそっぽを向いた。う、辛い…。はあ、とため息をつきながら歩く。あ、ついた。


「ユイコ〜大丈夫だった!?何かされた!?」
「何もされてないよ、怖かったけど」


20151101






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