「なっ、ななななんで私が京谷君と…!」
「お願い!誰もやりたがらないし…それに、話したことあるんでしょ?」
「(どこからそんな情報が!)」

宇佐美ユイコ、ピンチです。
あの傘をもらって1週間とちょっと立ちました。
次の授業、前の時に男女のペアを作っとけよと言われたのだが、直前にこんなことを言われるとは。男女ペアを作るのが好きな先生の授業なんて嫌いだ…!涙目で嫌だと訴えるが、手を合わせて「お願い!」と言ってくる委員長に私は逆らえない。

「それとも、他になりたい男子とか…いた?」
「いやいやいやいないけど!いないけどさ!」

京谷君、怖いんだよなあ…。でも、それで他の子がもっと怖い思いするぐらいだったら、まだ私のほうがいいのかな。私はまだ話したことあるし、なんてったって傘をもらった猛者だし!これで仲良くなれるチャンスかもだ!

「うん、いいよ!頑張ってみる!」
「ありがとう…!」

その返事を聞いて周りにいた子もありがとう、といい始めた。おいおいみんな、聞いてたの?友達は終始無表情で聞いていたが、「あんた本当に大丈夫なの?」って聞いてきた。「大丈夫だよ!」と笑顔を見せる。このクラスみんな京谷君恐れてるし、これを機に仲良くなって京谷君をみんなと仲良くさせるチャンス…!

…と思っていたのに。

「きょっ京谷くっ…」
「ああん?」
「いっいえ!何でもございません!」

全然駄目だった…!寧ろ前より険悪に…!?借りは返したからもう話しかけんなってことなの?ねえ凄い怖いんだけど…。ていうか二人で話し合えって今言われたじゃん!何でそんな睨むのさあ…!

「あっあー、京谷君消しゴム落としてるよっほら…」
「触んな」
「うっごめんなさい…」

消しゴムをひったくるように強引にとられた。悲しい。もう心が折れそう。しかも目つき怖いしさ。やっぱ駄目だったんだ、私は傘をくれただけなんだ。傘をあげたクラスの女子としか思っていないんだ…。やっぱり駄目だった…ごめんね皆…!

「…雨」

ぽつり、そう京谷君は呟いた。パッと窓を見ると確かに雨が降っている。こ、これは…!これは傘の話が出来るじゃないか!

「あのね、京谷君からもらった傘、持ってきたんだ…!」
「……俺傘なんてやったか?」
「えっ、うん!もらったよ、私…」

もしかして覚えてないの!?じゃあ今の私は傘をあげたクラスの女子ではなく、ただのクラスの女子…!?京谷君は斜め上を見上げて考え出すけど覚えてないそぶり。ええ、ええ、そんな…!傘って結構高いんだよ…?なのに覚えてないなんて…どんだけ私に興味ないの…。

「…全く覚えてねぇ」
「そっか…うん、じゃあ、この話は終わりにしよう」

ずっと言ってても仕方ないし…心には超刺さったけどいいよ、うん。全然大丈夫…。ちょっと泣きそうかな…。チラりと京谷君を見ると口を尖らせていて、何か考え事でもしてるのかな、と思った。

「何見てんだよ」
「いっいえっ、何もみておりません!」
「…」

ギンッと睨まれ私はビクビク。京谷君と普通に話す日なんて来るのだろうか。そうぼーっと考える。

「…お前俺と無理やりならされたんだろ」
「え」
「ペア」

それだけ言って、シャーペンをかちかちと押して芯を出した。漸く授業に取り組んでくれるのか…!そして今さっきの問いだけど、私は無言でプリントを見つめた。

「そういうのまじでめんどくせぇ」
「…」
「次あるかは知んねぇけど、ちゃんと断れよ」
「っあのね京谷君!」

ガタッと私は立ち上がった。それにみんなの視線が集まる。「どうしたんですか?」と先生に聞かれ、慌てて「なんでもないです!」と席に座った。ぱちくりと私を見ている京谷君に対して私はきゅっとスカートの裾を握りしめた。

「確かに、なってってお願いされたよ…でもっ、でも私は、最終的に自分の意志でペアになろうと思ったから…だから無理やりじゃないからっ、そこは分かってほ、し、い…です…」

段々と小声になっていく私。恥ずかしくて俯いた。京谷君急に大きい声出されて吃驚したかな。ていうかいきなりなんだこいつって思ったかな。ドキドキと心臓の音が凄くうるさい。京谷君は何も言ってこない。何だ、やっぱり冷めた感じなのかな…。とりあえず怖いから目を合わせずプリントの問題を解こう…。あ、あれ?京谷君シャーペン持ったまま動かしてない…。

「…お前俺と友達になりてーの?」
「へっ」

凄く素っ頓狂な声がでた。…え?友達になりたい、って…?いや別にそんなこと一度も思ったことはないんだけど…。ただ京谷君とのペアは無理やりならされたわけじゃないってことを言いたかっただけなんだけど…。いやいやこんなこと京谷君に言える訳ない。私は無言でいると、「ふーん」と少し真顔。え、何そのふーんって。もしかして無言を肯定と受け取った?それか私無意識に頷いてたかな?ええっどういう状況だこれ…。

「ほら、プリント解くぞ宇佐美」
「あっ…ひゃい!」
「声裏返ってんぞ」

何これ、何これ何これ!結果的に仲良くなれた…の?良かった、とりあえず仲良くはなれたんだ…!へへ、何だ京谷君。目つきは超悪いのにそこまで悪い人じゃないのかなあ。

「あ、京谷君そこ漢字違うよ」
「ああっ!?」
「ひいっ(プリント破れた…!)」

京谷君が引っ張ったせいでプリントが破れてしまった。…怖い。やっぱり仲良くなんて、仲良くなんてなれないよ〜〜!!

20151027





戻る
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -