「…あのよ」
「へあっは、はいい!」

歩いていってついたのは非常階段。ええ、私今からボコられるの…!?ていうかなんでここなの!?怖すぎ!はやく教室帰りたいよ…。

「お前がくれた傘…壊しちまったんだ」
「えっ」

まあ…京谷君なら壊しても仕方ないんじゃない…?それに帰ってこないと思ってたし。あんまり気にしてなかったなあ。それだけなのかな?「別に大丈夫です!」と言うと京谷君は罰が悪そうにして持っていた大きい袋を渡しに差し出した。ずっとこの袋気になってたんだよね、それを受け取り中を見ると…。

「えっか、かわっかわいい!」

思わず声を出してしまった。でもそれぐらい私には好みの傘だった。全体的にパステルカラーで小さい花がたくさん散りばめられている傘だった。この花加減が可愛い!おばさんくさいと言われようと私には可愛くみえた。

「もらっていいの!?」
「おう」
「ありがとう!」

きゃー!と叫びながらくるくると回っていると急に我に返った私。ギギギと京谷君の方に顔をむけると真顔で私をみていた。ビクビクしながら京谷君にごめんなさいと謝ると、きょとんとして。

「何で謝るんだ?」
「あ…えっと…うるさかったかな、とか…」
「別にそんなこと思わない」
「そ、そっか」

暫くの無言。そのあと「それじゃあ」と言って踵を返した。いやいや私も同じところ帰るんだけどね?なんかボスについていく下っ端みたいだ。でも周りの目は私に対しての同情。お前何したんだ、みたいな。いやあね、私は京谷君から傘をもらった猛者だからね…!
教室に戻るなり友達が突進するかのように駆け寄ってきた。

「あんた大丈夫!?噛みつかれなかった!?」
「大丈夫だったよ…!」

もう最初はどうなることかと思ったけどね!なんて友達に言うとよかったね!と頭をよしよしと撫でられた。

「それにしても、噛みつかれなかったってなに?」
「あれ、あんた知らないの?まあそっか、一時期有名なだけだったし。京谷君バレー部の上級生にはむかったりして及川先輩から『狂犬ちゃん』って呼ばれてるらしいのよ」
「ほおーう…」

確かに狂犬ぽい!すごいぽい!わかるわかる!狂犬だよ京谷君は!なんか凄い怖いし!目つきもちょ〜〜〜悪いし!でも傘くれたからなあ、優しい狂犬?いや意味わかんないや。てか及川先輩って誰。

「その袋なに?」
「傘」
「なんで袋入れてんの?」
「もらったんだ、京谷君に」
「えっ……ええええ!」

友達は驚いて後ろの席に腰辺りが当たって痛そうに顔をしかめた。眉間に皺を寄せながら「餌付けでもしたの…?」と。

「昨日、傘無かったっぽいから貸してあげたの」
「よく貸せたね」
「勢いだったよ」

あの時の自分はまじですごいと思う。
いまだったらもうできないんだろうなあ…。京谷君をチラりと見たら机に顔を伏せて寝ていて、本当によく分からない人だと思った。

20151025


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