「ごめっ待たせたね…」
「…や」
「かえろっか!」
「とりあえずローファーに履き替えろ」
「あっうん」
上履きのまま外に出ようとしていた私を止めた京谷君。さっすがあ。よし、ローファー履き替えた。京谷君の隣まで駆けて、定位置につく。ふふ、最近よく京谷君の隣を歩く。凄い嬉しい。
「楽しみ〜!美味しいのかな、新!かりゃあげくん!」
「……さっき」
「ん?」
「さっき、お前と仲いい眼鏡野郎が」
「…うん?」
「……やっぱなんでもねえ」
そう言って、小石を蹴った京谷君。…なんだろう、京谷君の目つきが、どことな〜く覇気がないような、弱そうな。いつもの京谷君らしくないなあ。何て声をかければいいんだろう。いや、ここで声をかけるべきではないのかな。
「お前は、ストレートに物を言う」
「え?うん」
「好きだって」
「うん」
「それがたまに俺に向けられるものだったら、すんげえ胸が痛くなる」
「…うん」
「それが何なのか、って今日までわかんなかったんだ」
「うん」
「だけど今さっき、眼鏡に色々言われてやっと分かった」
一体、何を言い始めたのかと思いきや。京谷君はぽつり、ぽつりと思い出したかのように話して行く。それがどういう方向に行くのかは分からない。私はただ聞いて、頷くだけ。
「どうやら俺は、お前が好きらしい」
凄いベタだけど、時が止まったかのようだった。こんなとき、どうしたら正解かなんて私は分からない。泣く?怒る?笑う?いやいや、そんなことはしない。私はとりあえず、自分がするであろう行動をしようと思うよ。ピタりと足を止めた。
「私だって好きだ!」
急に叫んだ私に京谷君は吃驚していた。
「私は、京谷君が大好き!」
断言するように、拳を握り締めながら。だって京谷君が私のことを好きだっていうから、私は今まで頑張ってとめていたこの思いが、あふれ出してしまった。あの時言った「好き」という言葉は、どんどん蓄積されていたのよ。
「…この前人間として好きっていったのは」
「あれはあの時言っても確実にフラれると思ったから!」
だって京谷君、絶対私のこと好きじゃなかったもの。
今だって、タツヤに言われて気づいただなんて、タツヤが何か言わなかったら、一生気づかなかったのかもしれない。私も私で、卒業するまで言わなかったのかもしれない。だけど京谷君は、私が必死に止めていた言葉を、言わせてしまった。
「…私の気持ち気づいてた?」
「…全く」
「そっか。やっぱ鈍いね」
でもそんなところも、好きだったりするんだよ。
「……付き合うか」
「…うん!」
「…俺でいいのか」
「うん!」
「あの眼鏡よりもか」
「京谷君がいいの!」
京谷君が、好きだから、タツヤよりも好きだから、だから京谷君がいいの。京谷君は私に何か言ってほしいんだろうけど、私はそれしかいえない。だけど思ったとおりの返事をもらったのか京谷君は嬉しそうに微笑んで、「そうか」と。
「京谷君可愛い!」
「あ?」
「ごっごめんなさい…」
やっぱり睨んだ顔はちょっと怖いです。
だけど、馴れていこうと思います。
20151229
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