「…ふふふたっちゃん。ということがあったんですよ」
「それはお前が可愛いんじゃなくて、食べてる様が何かの動物に見えて可愛いといったんじゃないのか」
「違うもん!絶対私のことをかわいいって言ったもん!」
「あまり過度な期待はするな宇佐美…後々恥ずかしくなるぞ」
「なっ、フラれるの前提!?まだわかんないし!」

何でタツヤはそうやって否定するんだ。私、結構京谷君といい感じ…な気がするんだけど。たまに目つき怖いけどね!ハミチキ一緒に食べたし、また一緒に帰る約束したし、かりゃあげくんも食べようって話したし…!

「ていうかお前、最近京谷京谷っつって部活早く切り上げてアルビノの観察ちゃんとしてねーだろ。日記の行少なくなったし」
「うっ…」
「恋にうつつを抜かしすぎだバカ。アルビノが可哀想だぞ」
「…」

確かに、最近はそんな感じだった。アルビノちゃん…。ゲージを覗くけど、出てきてはくれない。ごめんねえ、そういえば最近素っ気無かったかな、私。大好きだよアルビノちゃん…!アルビノちゃん…。出てきてください…!ゲージをずーっと見つめていたら、白いネズミは出てきて、私を見つけてゲージを齧り始めた。あっ…。人差し指を差し出すと、私の人差し指を甘噛みし始めた。くっ…。

「ごめんねえアルビノちゃん大好きだから…!寂しかったんだね!寂しかったんでしょう!?」
「うるさい」
「あ〜愛してる!アルビノちゃんビッグラブ!も〜大好き!」

もう可愛すぎる。アルビノちゃん、今日からまたびっしり飼育日記に君の可愛さを書きまくるからね。大好き。もう離さない、マイエンジェル。

「…お前はそうやって親バカになってるほうがいい」
「え?」
「京谷京谷言ってるお前よりも、ネズミが好きでたまらないって言ってるようなお前のほうが、好感持てるけどな」
「…」

タツヤは眼鏡をとって吹き始めた。…ああ、そっか、うん。

「…私、ちょっと暴走してたね」
「…」
「うん、大丈夫!部活を真面目にしろってことだよね、分かってるよ!ね、アルビノちゃ〜ん」
「…そういうことじゃなくてな」
「私、京谷君好き。だから」

シン、と静まり返る部室。ゲージの中でアルビノがタタタッと走り回る。可愛いなあ、アルビノ。

「ね、たっちゃん」




曇り空、俺は欠伸をしながら校門を出た。今日は宇佐美と帰る約束をしているので、ここらへんで待つことにしよう。きっと宇佐美は俺を見つけたら、走って駆け寄って、ネズミの話でもするんだろう。ネズミの話をしているときの宇佐美は、生き生きしていて、本当に好きなんだという印象が持てる。まだだろうか、と顔をあげたら。

「やあ、京谷君」

眼鏡をくいっとあげて、真顔で俺を見つめる。ああ、宇佐美と仲がいい生物部の眼鏡か。

「俺さ、たった今好きな子にフラれたんだよね。3年も片思いしてたのにな〜」
「……」
「何でだと思う?好きな人がいるからだよ」
「…」
「ほんと変わったよ、あいつ」

はあ、とため息をついてローファーに履き替える眼鏡。俺が何も言わないでいると、眼鏡はもう一度ため息をついて、振り向いた。少しだけ、寂しそうだ。

「宇佐美泣かしたらゆるさねーから」

そのひとことが、その場所全体に響き渡った。やけに通った声で言いやがるから、耳に残って仕方ない。

「さあてと、猿のレポートでも書きますかね」

スタスタと帰りだしたそいつの背中をずっと追いかけていると、後ろからバタバタと大きな足音。振り返ると、そこには。

「京谷くっ…!」

顔を真っ赤にして走っている宇佐美がいた。



20151229



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