「とっとにかく、あれは言わされたようなものだから!気にしないで!」
「…でも」
「私は!京谷君と喋りたいから!」

京谷君と喋りたいから、だから無視なんてしないで。京谷君なら分かってくれるよね、この気持ち。

「…そうか」
「うん!」

…あれ?京谷君、よく見るとちょっと顔が赤いような……。どうしてだろう……。……あ!も、もしかして私が京谷君と喋りたいって言ったから!?だ、だとしたら私、結構恥ずかしいこと言ってしまったんだ…!う、は、恥ずかしい……。

「あ、あの、えっと、京谷く」
「…俺も、お前と喋れなくなるのは、なんつーか…嫌、だったから…その」

京谷君の少し赤い頬に、私は目がそらせない。

「そう言ってくれて、………う、れしい」

もう、本当に今なら死んでもいいって思う。

「……そっ、そ、そ、うなんだ…」

きっと私もすっごい顔が赤いと思う。二人とも顔が赤いなんて、どんな少女漫画だよ。しかも片方は相手のことが好き、って…。なんて生殺し!でも、漸く認めたこの気持ちは、暴走してしまいそうで怖い。だって私いますぐにでも京谷君を抱きしめたいんだもの。チラりと京谷君を見たら、その赤い頬でギロりと睨んでくるから、怖いような、可愛らしいような…。う、でもやっぱ怖い。

「じゅ、授業始まっちゃったかな?」
「…今さっきチャイムが鳴った」
「そ、そっか。戻る?」
「…いや。途中で入るのだりーし。お前はどうすんだよ」
「きょ、京谷君が帰らないなら…私も帰らない…」
「…」

私、結構とんでもないことを言っている気がする。でも今さっきので納得してくれた京谷君なら、今のも友達としてなんて変な風に受け取るんだろうね。別に、別に良いけど…くそう。にしても京谷君、ずっとこの部屋にいて大丈夫なのかな。動物の匂いとか敏感そうだけど。

「京谷君、気分悪くない?」
「?いや」
「そっか。動物の匂い駄目って人いるからさ」
「…大丈夫だ」
「なら良かった」

京谷君座りなよ、とイスを差し出した。私もその横にイスを持ってきて座る。何だか変な感じだ。生物部の部室に、京谷君がいる。アルビノちゃんのほうを向くと京谷君が恐ろしいのか隠れていた。か、可愛い。

「…何か、お前小動物みたいだな」
「え?」
「ちっこくて、丸まってる…みたいな」
「なっなにそれ!可愛いイメージ?」
「おー、まんまるでな」
「(嬉しいような嬉しくないような…)」
「…雨だ」

窓から見えたのは、ザアザア降りになっている外の風景。あ、そういえば予報で今日は朝から雨が降るんだったんだよなあ。傘、ちゃんと持ってきたよね、京谷君から持らった傘。

「傘忘れた」
「あ、じゃあ私の傘使う?私折りたたみ持ってるから」
「…俺があげたやつ?」
「そうそう!…て、え?」

確か京谷君、覚えてないとか言ってなかったっけ…あれ?京谷君は頬をぽりぽりと掻いて、ふい、とそっぽを向いた。

「…本当は覚えてたんだよ」
「ええ!な、なんで覚えてないとか嘘ついたの!私結構悲しかったんだけど!」
「…恥ずかったんだよ」

え、えええ!覚えていることが!?は、恥ずかしかったの!?あ、あ、でも何か分かる気がする…。女に女物の傘をやるって恥ずかしい…ことなのかな。よくわかんないけど。でもきっと京谷君は恥ずかしかったんだろう。うん、覚えててくれたならいいや。

「あの傘ね、可愛いよね、私すっごい気に入ってるんだ」
「…そうか」
「雨の日は憂鬱だったけど、あの傘で雨の日も好きになったんだよ〜!ルンルン気分で帰れるし」
「…そ、か」
「その傘可愛いねって言われたらね、本当に嬉しくなっちゃうんだ。だからすっごい自慢しちゃう」
「…」
「京谷君?」

ま、また暴走してしまった…!好きなものになるとしゃべるのが止まらないのは私の悪いくせだ。京谷君のほうを慌てて向くと、顔を真っ赤にして、今にも湯気が出そうだった。

「…え、え、えと…」
「…」
「て、照れてるのかな?かっかわいいな〜京谷君!」
「…うるせえ」
「ヒイ!」

本気でにらまれました。怖い。やっぱり顔が真っ赤でも睨まれたら怖いのです。

20151223


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